TRAVEL TICKET

04 旅先の壁。


Nov 5th, 2014

photo & text_aya tokunaga
edit_rhino inc.

海外旅行、一人旅、家族旅行......。旅とは一体何なのでしょうか。一歩外にでるだけでも、視点を変えれば旅とも感じることができます。毎日を少し面白くしてくれる、徳永さんの写真と言葉のコラム。今回は旅先で目にした様々な「壁」にまつわるストーリーをお届けします。

旅先で、自分の街で、何処に居ようともとにかくいつでも目にするもの、それは壁。
意識していなくても、常に目にしている。
気がついたらずーっと壁を触りながら歩いていたり、ガラスの壁には姿を映して確認したりってことも、よくある。
囲まれたり寄りかかったり。

近代的な街の壁、タイムスリップしたかの様な昔情緒溢れる壁、アジアの壁、ヨーロッパの壁、日本の壁、古い壁、新しい壁。

壁は色々な思いを呼び起こす。
ストレートに力強い壁。何の印象も残らないけれどもただそこにある壁。

なかでも心惹かれるのは石造りの壁。
ヨーロッパや植民地だったところには沢山見かける。
とにかくとても味わいがある。
何度も塗り固められて、
分厚くなって重くなっている。
剥げたところからは別のテクスチャーが見え、そのまた下にも別の物が覗いてる。全然緻密じゃない作業が如何にも歴史を塗り固めていった跡のようで、色々な痕がそこにはある。
歴史を紡ぐ、木の年輪のよう。

ある時期の旅のコンタクトシートを見ていたらびっくりした、余りに壁の写真が多いから。
壁に惹き付けられてたんだなあ、あのころ。
どきどきしながら興奮しながらシャッターを切っていた。

ちょっと前に撮った写真のコンタクトシートほど後になって楽しいものはない。

その時の気分、関心のあったもの、いろんな物がストレートに雄弁に留められている。
とても正直で、他の人に見せるのはちょっと気恥ずかしい。
その時の自分には気付かなかった気づきや気分すらも新鮮によみがえる。時間が経てば立つほど旅のその時に発見したものとはまた別の発見があったりする。

壁は時として
精巧な絵画の様に感動を植え付ける。
色合いの美しさ、造形の美しさ、そして次にはもう見る事の出来ない情景のもつ儚い存在の美しさ。

壁に落ちる影の美しさに見とれることもある。
今この季節のこの時間のこの瞬間だからこそ。

そして 夜の壁にはなんともいい難い予感とそこはかとない色気を感じるでしょう?
まったりと黄色い光の色にわくわくする。
これから何が起きるかな、この不夜城で

壁に寄り添いたくなる気持ち、充分わかるよ、うんうん、と言いたくなるこの木!こういうのは結構南国で目にする事が多い。

壁ひとつ、見ているだけでもそこにはストーリーがあったり歴史があったりする。

こんな壁を目にすると、何だか恥ずかしかったりむずむずするような気持ちを思い出す。
生きているんだなあ!相合い傘やハートマークは万国共通の愛のすみか。
可愛いね!争いなんか、要らないね。

そしてもう一つ、絶対に見逃せない壁がある。

それは惜しげも無く生活を披露している壁。
ここのウチには赤ちゃんが居て終始賑やかなんだろう。女所帯なのかな、パンツが何枚も。きっとかしましく、皆で赤ちゃんのお世話を助け合いながらおおらかに暮らしているんだろう。
玄関先でお洗濯も終わらせたら家の前の道のお掃除もしなくてはね!
しかし、何でこんなにパンツばかりなんだろう、他のアイテムはないのかしら、と思わず独り言。

以前もらったカードに
『モノゴトの見え方は気持ち次第』
っていうメッセージが添えられているのがあった。

Travelも きっとそうなんだな〜

心の在り方で、響くものや印象に残る事柄が変わってくる。
同じものを見ていても。
新鮮に捉える心の回路が開いたら、きっと世界がもっともっときらきらと輝き出すのだろう!!

心の中に、チケットを持って色々なことをキャッチ!!
どこにいようとも!

PROFILE
徳永 彩

東京生まれ。多摩美術大学を卒業後、96年より活動を開始。Bibliothèque Nationale de France、神戸ファッションフォトミュージアムなどに作品が永久収蔵。現在は、雑誌・広告・CDジャケットなどを中心に活動。

01 イタリアの旅。

03 モロッコの旅。


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