HELLO! FROM NEW YORK

猫の浮世絵「Life of Cats 」展覧会が開催中。


Mar 25th, 2015

edit_akiko ichikawa

皆さんは犬派でしょうか? 猫派でしょうか? ここ数年、日本では特に猫を素材とするビジネスが大流行り、と思うのは私が猫派だからでしょうか? 猫を題材とする写真集や漫画、本、そして猫カフェもずいぶん前から定着しています。

皆さんは犬派でしょうか? 猫派でしょうか? ここ数年、日本では特に猫を素材とするビジネスが大流行り、と思うのは私が猫派だからでしょうか? 猫を題材とする写真集や漫画、本、そして猫カフェもずいぶん前から定着しています。

先日こちらでもリポートしたニューヨーク初の猫カフェは、その後も大人気で予約が数ヶ月先までとれない、という状況だそうです。ニューヨークの猫ブームも日本に負けていません! そんな中、とてもタイムリーといえる展覧会「Life of Cats」がジャパンソサエティで始まりました。これは公益財団法人平木浮世絵財団の協力を得て開催される、浮世絵の中に登場する猫たちをテーマにした展覧会です。

※1

本展では江戸期から明治期までの浮世絵と関連する絵画や陶芸作品など、全部で100点を超える展示品が集められました。そもそも日本へ猫が伝来したのは6世紀半ばなのだそうです。仏教伝来とともに、その教典をネズミの害から守るために中国からの船に乗ってやってきたのがその始まりとか。昔は猫が大変貴重だったようで、今では考えられないことですが、猫に首ひもをつけてたいそう可愛がられていたようです。役者絵などで有名だった歌川国貞は『源氏物語』の「若菜上」帖に登場する女三宮と猫の様子を描いていますが、この猫にも首ひもがついています。

※2

また江戸の遊郭では花魁などの間で猫を飼うことが流行しました。美人画で有名な喜多川歌麿、そして歌川国芳などが豪勢に着飾った花魁と猫をモチーフにした浮世絵をたくさん発表しました。半襟と着物、帯など、今でいうパターン・オン・パターンの着物の着こなしや、ヘアメイク―髷の形やかんざしの使い方、紅などは本当にゴージャスです。当時のファッショニスタ、といっていい彼女たちにとっては猫が最高にラグジュアリーなアクセサリーであり、ステータスシンボルになっていた、ともいえるでしょう。

※3

一方で展覧会には“化け猫”のコーナーも。その後飼い猫や野良猫として人々の生活の中で一般化するにしたがい、猫が忍び足で歩くことや、暗闇では目が光るといったミステリアスな側面もクローズアップされてきました。江戸後期の歌舞伎では怪談物の役柄として「猫又」が登場し、特に「東海道五十三次の内、岡崎」はこの猫又=化け猫が出て来るストーリーとなっています。背景におどろおどろしい顔をした化け猫、そしてしっぽの先が二股になった猫が踊る鬼気迫る場面は迫力満点です。

※4

猫たちがまるで人間のように、歌舞伎役者に見立てられたり、かつお節の上をひょいひょいと高下駄で歩くアクロバットをしたり、という漫画のような浮世絵もありました。今も『きょうの猫村さん』(ほし よりこ著/マガジンハウス)などで猫が時に人間以上に人間らしく、イキイキと描かれる漫画がありますが、江戸時代の浮世絵でも猫たちはとても表情豊かに、そしてコミカルな動きがとらえられています。そもそも浮世絵は大衆文化や娯楽の一端を担っており、今の漫画と似た役割を果たしていた、ともいえるのではないでしょうか?

※5

ほか、招き猫や眠り猫、といったお馴染みの猫たちの立体作品なども展示されています。また展覧会にあわせて、ゴールデンウィークの5月3日にはジャパンソサエティの向かいの公園に、きゃりーぱみゅぱみゅの舞台演出などで知られるポップアート作家の増田セバスチャンが体長3mの巨大なハローキティの彫刻を制作し設置する、というイベントもあるそうです。 さらにニューヨークの猫ブームも加速しそうですね。猫派、としては嬉しいかぎりの春、です。

Life of Cats: Selections from the Hiraki Ukiyo-e Collection
お江戸猫めぐり:平木浮世絵コレクションを中心に
(6/7まで)
Japan Society
333 East 47th Street at First Avenue, New York
Tel 212-715-1258
11:00~18:00 (Tue-Thu), 11:00~21:00 (Fri), 11:00~17:00 (Sat & Sun)
月曜と祝日は休館
http://www.japansociety.org

Photos:
Cover: (from left)
Utagawa Kunisada (Toyokuni III: 1786–1865), Bun’ya no Yasuhide from the series Parodies of the Six Poetic Immortals, 1848-54. Courtesy of Hiraki Ukiyo-e Foundation; Utagawa Kunisada (1786–1865), The Courtesan Ōsei with Menami and Onami of the Kado-ebiya in Kyōmachi, Itchōme in the New Yoshiwara, 1830-44. . Courtesy of Hiraki Ukiyo-e Foundation; Utagawa Kuniyoshi (1797–1861), Saint Furuna from the series Sixteen Wonderful Considerations of Profit, 1844-48. Courtesy of Hiraki Ukiyo-e Foundation; Utagawa Kunisada II (1823–1880), Artisans from the series The Four Social Classes of Hanazakari, 1848-54. Courtesy of Hiraki Ukiyo-e Foundation; Keisai Eisen (1790–1848), The Syllable “Ro”, Nihonbashi: Kannosuke of the Okamoto-ya, from the series Courtesans for Compass Points in Edo, 1818-30. Courtesy of Hiraki Ukiyo-e Foundation; Utagawa Kunisada (1786–1865), Cat and Beauty from the series Beauties in New Styles Dyed to Order, 1818-30. Courtesy of Hiraki Ukiyo-e Foundation; Utagawa Kuniyoshi (1797–1861), Housewife Swats Cat from the series E-kyōdai, ca. 1845. Courtesy Sue Cassidy Clark; Utagawa Yoshiiku (1833–1904), The Story of Otomi and Yosaburō, 1860. Courtesy of Hiraki Ukiyo-e Foundation; Nishikawa Sukenobu (1671–1751), Beauty with a Kitten, ca. 1716–36. Courtesy Sue Cassidy Clark.

※1 (from left)
Utagawa Kuniyoshi (1797–1861), Cats Performing as Kagamiyana in the play Zaori hachi no dan from the series Fashionable Cat Frolics, 1847. Courtesy Private Collection, New York; Utagawa Kuniyoshi (1797–1861), The Lovers Oshun and Denbei: A Play with Sleazy Love Scenes, from the series Fashionable Cat Frolics, 1847. Courtesy Private Collection, New York; Hōzōbō Shinkai (died 1688), Meditating Cat with Kyoka Poem, Late 17th century. Courtesy Sue Cassidy Clark; Utagawa Kuniyoshi (1797–1861), Chrysanthemums from the series Eight Selected Flowers from the Garden, 1844-48. Courtesy of Hiraki Ukiyo-e Foundation; Keisai Eisen (1790–1848), Young Lady Holding a Cat, c. 1845.
Courtesy of Ronin Gallery, New York.

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Utagawa Kuniyoshi (1797–1861), Chrysanthemums from the series Eight Selected Flowers from the Garden, 1844–48. Courtesy Hiraki Ukiyo-e Foundation.

※3 (from left)
Utagawa Kuniyoshi (1797–1861), An Imaginary Scene of the Origin of the Cat Stone at Okabe from the Fifty-three Stations of the Tōkaidō Road: Teranishi Kanshin and Ōe Inabanosuke, 1848-54. Courtesy of Hiraki Ukiyo-e Foundation; Utagawa Kunisada (Toyokuni III; 1786–1865), Beloved Concubine Kochō, Her Maid Okoma, and Narushima Tairyō, 1853.. Courtesy of Hiraki Ukiyo-e Foundation; Utagawa Kunisada (Toyokuni III: 1786–1865), Actors Ichimura Takematsu III as Tatsuyo’s Younger Sister Okiku, Nakamura Shikan IV as Suwa Kazuemon, and Ichimura Uzaemon XIII as Tatsuyo, the Monster of the Cat Stone, 1861. Courtesy of Hiraki Ukiyo-e Foundation; Utagawa Kunisada (Toyokuni III: 1786–1865), New Autumn Kyōgen Plays for Modern Times: The Cat Demon of Yatsuhashi Bridge at Okazaki, First Scene of the Sixth Act from the series Syllabic Diary of the Stations of the Tōkaidō, 1861. Courtesy of Hiraki Ukiyo-e Foundation.

※4
Utagawa Kuniyoshi (1797–1861), From the Fifty-three Stations of the Tōkaidō Road: Scene at Okazaki: Onoe Kikugorō III as the Neko-ishi no Kai, the Spirit of the Cat Stone, Mimasu Gennosuke I as Shirasuga Jūemon, and Ichimura Uzaemon XII as Inabanosuke, Courtesy Hiraki Ukiyo-e Foundation.

※5
Utagawa Hiroshige (1797–1858), Cat Crossing to Eat, 1830–44. Courtesy Hiraki Ukiyo-e Foundation.

Navigator
市川 暁子

フリーランスのジャーナリストとしてNYのファッションやカルチャー、ライフスタイルに関する記事を雑誌や新聞に寄稿。NYコレクションの取材は10年以上続けており、CFDA(アメリカファッション協議会)ファッション大賞のデザイナーもノミネートしている。ほか、並行してブラジルのサンパウロおよびリオのファッションウィーク取材も継続中。2007年には『NYのおみやげ』(ギャップジャパン)を、2013年にはブラジル人イラストレーター、フィリペ・ジャルジンの作品集『スケッチ&スナップ』(六燿社)を編集、出版した。
www.originalslope.com

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