HELLO! FROM NEW YORK

ローワーイーストサイドの新しい映画館「メトログラフ」。


Jun 29th, 2016

edit_akiko ichikawa

最近映画といえば、ネットの配信やレンタルが便利でなかなか映画館へ足を運ぶ機会が減ってきているかもしれません。東京でも80年代後半からのミニシアター文化を支えてきた 渋谷のシネマライズが今年閉館するなど、特にインディ系映画にとっては厳しい状況となっています。

最近映画といえば、ネットの配信やレンタルが便利でなかなか映画館へ足を運ぶ機会が減ってきているかもしれません。東京でも80年代後半からのミニシアター文化を支えてきた 渋谷のシネマライズが今年閉館するなど、特にインディ系映画にとっては厳しい状況となっています。

そんなご時世ながらニューヨークのローワーイーストサイドにはこの3月に「Metrograph(メトログラフ)」というミニシアターがオープンしました。インディ系の新しい映画館ができるのは、ニューヨークでは10年以上ぶりのことです。

創始者は自らも映画製作に携わるアレクサンダー・オルチ(写真中央)。彼は「THE WINDMILL MOVIE 」という作品で2008年に ニューヨーク映画祭に参加し、MoMAにもその映画が収蔵されています。ちなみに彼は自分の名前を冠した「Alexander Olch」というメンズのシャツとネクタイを主体としたブランドも手がけている多彩な人で、お店も映画館の近所にあります。

上映される作品は新作から古典まで幅広く、プログラムはもともとリンカーンセンターのフィルムソサエティで活躍したジェイコブ・ペルリン(右)と、サンダンス映画祭など多くの映画祭で活動したアリザ・マ(左)が担当しています。最近のプログラムでは選者として映画監督のスパイク・リーを招いたり、スタジオ・ジブリの作品を集めたシリーズなどがありました。

映画館内のインテリアは古き良き銀幕の時代を感じさせるクラシックな設え。入り口正面には映画を見ながらつまみたいスナック類がズラリと並んだ売店もあります。お菓子の種類も気が利いていて、オリジナルのパッケージに入ったポップコーンは「カシオ・ペペ(胡椒味のパスタ)」や「シーソルト&オリーヴオイル」風味などグルメな品揃えが特徴です。

2階にはレストラン&バー「Metrograph Commisary (メトログラフ・コミッサリー)」があります。ここは1920~40年代のハリウッド黄金期にあった撮影所の食堂をイメージして作られており、映画関係者や俳優、観客などが気軽に集う自由闊達な雰囲気を演出しているのだそうです。

メニューも本格派でタルタルステーキやビーツのスープといった前菜から、グリルした魚料理やパスタなどのメイン、食後のチーズまでがきちんと揃っています。バーエリアではオリジナルのカクテルも楽しめるので、映画の前後に一杯、というのもよいかもしれません。

レストランのとなりには映画関係の書籍やアートブックをセレクトしたブックコーナーも併設。映画を見ない日でも本をチェックしに来たり、レストランでお茶をしたりといった立ち寄り方もできそうです。

マンハッタンのローワーイーストサイドは、その昔からカルチャーの発信源として存在感を持ち続けてきました。古くは映画「ギャング・オブ・ニューヨーク」に描かれたようにニューヨーカー移民が降り立った場所でもあり、その後90年代にはグラフィティカルチャーの中心地でもありました。

ここ数年はブルックリンにヒップスターと呼ばれるような若者たちが移り住み、そのお株を奪われているようでしたが、最近ではこのエリアにもアートギャラリーが多くできたり、小さくても面白いコンセプトの店がオープンしています。そんな中、このメトログラフも映画を中心としたローワーイーストカルチャーの“ハブ(中継地点)”として新しいランドマークとなりそうです。

Metrograph
No.7 Ludlow Street, New York, NY 10002
T: 212-660-0312
https://metrograph.com/

Photos Courtesy of Metrograph

Navigator
市川 暁子

フリーランスのジャーナリストとしてNYのファッションやカルチャー、ライフスタイルに関する記事を雑誌や新聞に寄稿。NYコレクションの取材は10年以上続けており、CFDA(アメリカファッション協議会)ファッション大賞のデザイナーもノミネートしている。ほか、並行してブラジルのサンパウロおよびリオのファッションウィーク取材も継続中。2007年には『NYのおみやげ』(ギャップジャパン)を、2013年にはブラジル人イラストレーター、フィリペ・ジャルジンの作品集『スケッチ&スナップ』(六燿社)を編集、出版した。
www.originalslope.com

今、話題のノマド地区。

地下鉄構内の新スポット「TURNSTYLE」。


FEATURED ARTICLES

Mar 2nd, 2017

ICON OF TRAD

Vol.51 トラッドな春夏スーツ服地の知識を蓄えれば仕事も快適にこなせる。

サマースーツの定番服地となるウールトロについて、ニューヨーカーのチーフデザイナーの声と共にその特徴を予習。今シーズンのス...

Mar 9th, 2017

HOW TO

ジップアップ パーカ Vol.01

氷雪地帯で生活をしていたアラスカ先住民のイヌイット民族が、アザラシやトナカイなど、動物の皮革でフード付きの上着(アノラッ...

Oct 20th, 2016

HOW TO

ストライプ スーツ Vol.02

Vol.01のディテール解説に続き、Vol.02ではストライプスーツを着こなすスタイリングを提案。Vゾーンのアレンジで印象はぐっと変え...

Mar 2nd, 2016

ICON OF TRAD

Vol.39 女性がほんらい男物だったトレンチコートを着るとき

そもそも男性服であったトレンチコートは、どのようにして女性たちの間に浸透していったのだろうか?

Aug 25th, 2016

HOW TO

ネイビーブレザー Vol.01

アメリカントラディショナルファッションの代名詞ともいうべきネイビーブレザーは、日本では《紺ブレ》の愛称で親しまれている。...

Jan 12th, 2017

HOW TO

トレンチコート Vol.01

トレンチコートが生まれたのは第一次世界大戦下でのこと。イギリス軍が西部戦線での長い塹壕(=トレンチ)に耐えるために、悪天...


YOU MAY ALSO LIKE

Jun 15th, 2016

HELLO! FROM NEW YORK

地下鉄構内の新スポット「TURNSTYLE」。

最近、ニューヨークの地下鉄構内も続々と再開発が進んでいます。中でも話題となっているスポットは59St/Columbus Circle駅の地下...

May 25th, 2016

HELLO! FROM NEW YORK

テクノロジー時代におけるファッションの可能性。

メトロポリタン美術館の服飾部門であるコスチュームインスティテュートが企画する「Manus x Machina: Fashion in an Age of Techn...

May 11th, 2016

HELLO! FROM NEW YORK

ニューヨーカーのダイエット最新事情。

ニューヨークもこれから一気に夏に向かっていく季節です。だんだん薄着になっていくこの時期、ダイエットに関心が向く人も多いの...

Apr 27th, 2016

HELLO! FROM NEW YORK

グリーンポイントのカフェ「Bakeri」へ。

ブルックリンのウィリアムズバーグ地区を北上していくと「グリーンポイント」というエリアになります。今、この界隈もかなり開発...

Apr 13th, 2016

HELLO! FROM NEW YORK

メトロポリタン美術館の新館がオープン。

世界3大美術館のひとつに数えられるニューヨークのメトロポリタン美術館。その分館として近現代美術にフォーカスした「The Met B...

Mar 23rd, 2016

HELLO! FROM NEW YORK

世界の有名シェフたちによるメニューが 結集した「シェフズ・クラブ」。

アメリカのグルメ雑誌『FOOD & WINE(フード&ワイン)』がプロデュースしている「Chef’s Club(シェフズ・クラブ)」というレス...