世界3大美術館のひとつに数えられるニューヨークのメトロポリタン美術館。その分館として近現代美術にフォーカスした「The Met Breuer(メット・ブロイヤー)」が今年3月半ばにオープンしました。
ここはもともとホイットニー美術館だったところで、逆さまの階段のようなユニークな外観のビルディングはモダン建築の巨匠、マルセル・ブロイヤーによるものです。1966 年に作られたこの時代の傑作といわれ、新館のネーミングはこの建築とブロイヤーに敬意を表したものとなっています。
オープニングの企画展は2つあり、ルネッサンス期から現代まで190点以上の“未完成”作品を集めた「Unfinished: Thoughts Left Visible」がメインとなる展示です。
レオナルド・ダ・ヴィンチからフィンセント・ファン・ゴッホ、アンディ・ウォーホルなど年代もさまざまなアーティストたちの作品は、塗り残しがあったり、肖像画の顔が描かれていなかったり。
中には未完成ながら完成品として、過去展覧会に出品されたものもあり、アートにおける完成の意味とは? また、未完成の美とは? について問う面白い視点の企画だと思いました。
もうひとつはインド出身のアーティストによる「Nasreen Mohamedi」展。モノクロームの作品が多く、自然からインスパイアされたラインが印象的です。ミニマルで幾何学的な作風は、美術館のモダンな雰囲気によくマッチしていると感じました。
今回ホイットニーからメトロポリタンへ美術館自体が入れ替わるにあたっては、大きな改装は加えていないというのもポイントになっています。むしろ‘66年の竣工当時のレイアウトに戻す、といった改修をしたそうです。建築のオリジナルコンセプトも大事にした、見事なバトンタッチともいえるでしょう。
この夏はアート系出版社のPhaidonが館内にポップアップのブックストアを開店しています。ほかにも、ブルーボトルコーヒーやニューヨークの人気レストラン「Estela」のシェフによる「Estela Breuer」もオープン予定、と話題がつきません。
The Met Breuer
945 Madison Avenue, New York
Tel: 212-731-1675
http://www.metmuseum.org
Photo credits:
Cover, 2, 4, 5
The Metropolitan Museum of Art. Copyright 2016
1,
The Met Breuer
Photograph by Ed Lederman
3,
Andy Warhol (American, 1928–1987)
Do It Yourself (Violin)
1962
© 2015 The Andy Warhol Foundation for the Visual Arts, Inc. / Artists Rights Society (ARS), New York