HELLO! FROM NEW YORK

Vol.25 紅葉狩りも兼ねた小旅行、DiaBeaconで現代美術を楽しむ。


Nov 13th, 2013

Edit_Akiko Ichikawa

秋も深まってきたN.Y.ですが、少し足をのばしてアップステートまで”遠足”というのはいかがでしょうか?
グランドセントラル駅からメトロノース鉄道の〈ハドソンライン〉に乗って約1時間半。車窓からはハーレムを通り越してブロンクスへ、エリア毎に変化する街の風景を感じることができます。そしていつの間にかハドソンリバー沿いには色鮮やかに紅葉する樹々の連なりが現れてきます。N.Y.というと高層ビル群の大都会をイメージしがちですが、少し北へ行くと驚くほどの大自然に恵まれているのです。

マンハッタンの西側を流れるハドソンリバーの北方、N.Y.州のアップステートエリアは最近若手アーティスト達がアトリエを構えるなど、現代アートのメッカとして注目されつつあります。中でも訪れて欲しいのが「Dia: Beacon(ディア・ビーコン)」です。
Diaは70年代に設立された現代美術関連事業のNPO団体。60〜70年代のアートを中心にコレクションされていて、マンハッタン内にもいくつか展示スペースがあります。その中でも2003年に設立されたこのDia: Beaconは最も広大かつ充実した展示を備えています。

このエリアはかつて工場地帯としても栄えた土地。このDia:Beaconは1929年に建てられたナビスコの工場跡を再利用しています。20世紀の工業建築を代表するともいえる建物は、その当時の様子を偲ばせる名残でもあります。中でも見どころは3万スクエアフィート(2787㎡)もの展示スペースを最大限に活かした、大きなスケールの立体作品です。

特に私が好きなのはリチャード・セラの作品です。錆び付いた鉄板を湾曲させて巨大な壁としてシンプルに組み合わせている作品群。それぞれには入口があり、中に入ればまさにそのアート作品を”体感”することができます。展示室の窓から入る光の調子にともない、作品の影や色が刻々と変化していくさまは本当にドラマティックで、ぜひゆっくり時間をかけてその様子を鑑賞していただけたらと思います。

Dia:Beaconには、ウォルター・デ・マリアやダン・フレヴィン、ソル・ルウィット、ヨーゼフ・ボイス、ドナルド・ジャッド、アンディ・ウォーホルなどの作品がありますが、どれも空間の使い方がとても贅沢で現代アートを見せる環境としては最高の部類に入るのではないでしょうか。

アップステートの解放的な空気感のもと鑑賞する現代アート。これはマンハッタンの美術館では得られない、希有な体験です。ハドソンリバー沿いには四季折々の表情があり、またワイナリーやレストランもあるので、 N.Y.へお越しの際は、ぜひ1日は都会の喧噪を離れ、アップステートへ行かれることをお薦めします。

Dia: Beacon
3 Beekman Street, Beacon, NY
T: 845-440-0100
http://www.diaart.org/sites/main/beacon
Photos by Richard Barnes, Michael Govan (Acrial photo)
©Dia Art Foundation


NAVIGATOR
市川暁子

フリーランスのジャーナリストとしてNYのファッションやカルチャー、ライフスタイルに関する記事を雑誌や新聞に寄稿。NYコレクションの取材は10年以上続けており、CFDA(アメリカファッション協議会)ファッション大賞のデザイナーもノミネートしている。ほか、並行してブラジルのサンパウロおよびリオのファッションウィーク取材も継続中。2007年には『NYのおみやげ』(ギャップジャパン)を、2013年にはブラジル人イラストレーター、フィリペ・ジャルジンの作品集『スケッチ&スナップ』(六燿社)を編集、出版した。www.originalslope.com

クリエイターのデスクトップ #1

植物との暮らしを提案する、グリーン・フィンガーズがN.Y.にも開店。


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