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ハイヒールの魔力。ブルックリン美術館で「キラー・ヒール」展、開催中。


Jan 7th, 2015

edit_akiko ichikawa

新年あけましておめでとうございます。お正月休み、皆さんはいかがお過ごしでしたか? 私はお休みの最後に、とてもインスピレーショナルな展覧会を観てきました。現在ブルックリン美術館で開催中の「Killer Heels」展。これは17世紀中盤から現代まで、約160足のハイヒールを展示する企画です。

新年あけましておめでとうございます。お正月休み、皆さんはいかがお過ごしでしたか? 私はお休みの最後に、とてもインスピレーショナルな展覧会を観てきました。現在ブルックリン美術館で開催中の「Killer Heels」展。これは17世紀中盤から現代まで、約160足のハイヒールを展示する企画です。

※1

そもそもハイヒールとは人間の足の形状と機能性を全く無視しているといってもいいデザイン。なのに、これまで人類はこの不必要に高いヒールのついた靴へ、時に異常ともいえるほどの愛情と執着を持ってきました。現代を代表するファッションフォトグラファー、スティーブン・クラインやニック・ナイトがこの皮肉ともいえる状況を映像作品に表しています。クラインは凶器にも見まごう尖ったヒールを強調し、一方でナイトはまるでシンデレラが履くような透明のガラスの靴に、人間の足が窮屈に押込められる痛々しい様子を描いています。

※2

ここ数年はまるで女性たちへの挑戦状ともいわんばかりに、プラットフォームのソールも分厚くなり、ますますヒールの高さは増しています。ヒールが高ければ高いほど、セクシーで女性らしいのか? 南アフリカのプロダクトデザイナー、リーニー・ヴァン・ダー・ヴァイヴァーが制作した、その名も「Scary Beautiful(恐ろく美しい靴)」いう作品がその問いへの回答を示してくれているかもしれません。前後逆になったようなデザインの超ハイヒールを履いて歩く女性を映した作品で、よたよたと歩く様子は美しさとはほど遠いと感じます。ヴァイヴァーによれば「ハイヒールが伝統的に果たして来た役割、どこまで高くなればセクシーでなくなり、それがグロテスクなものとなるのか」という考察なのだそうです。

※3

昨今のファッショントレンドでは、ハイヒールとは真逆、機能性とファッション性を兼ね備えたといってもいいようなスニーカーが一般化してきています。シャネルやディオールのようなラグジュアリーブランドもこぞってスニーカーを発表し、マニッシュなフラットヒールでもデザインコンシャスなものが多く提案されています。

※4

実際に私もファッションを生業としつつ、毎日定番化しているのはフラットシューズばかりだな……と思っていた矢先、展覧会場に颯爽と入って行くピンクの髪のスタイリッシュな女性を目にしました。ラインストーンがびっしりついたハイヒールを履いて、膝丈の黒いドレスがよく身体にフィットしていました。ここまでお洒落して美術展に来るのも珍しいかもしれないですが、彼女の新年の心意気が装いに表現されているのが伝わってきて、なんだか嬉しい気分になりました。女性たるもの、ハイヒールはやっぱり履いた方がいいかも? 2015年、今年は少し、いつもより高めのヒールを履いてみませんか? きっとその高さからいつもと違う風景が見えるかもしれません。

Killer Heels: The Art of the High-Heeled Shoe (2/15まで)
Brooklyn Museum
200 Eastern Parkway, Brooklyn, NY
T: 718-638-5000
http://www.brooklynmuseum.org
11:00~18:00 (水、金、土、日)、11:00~22:00(木)、毎月第一土曜日は23:00まで開館。月、火曜定休、感謝祭、クリスマス、元旦は休館

※1
Christian Louboutin. “Printz,” Spring/Summer 2013–14. Courtesy of Christian Louboutin. Photo: Jay Zukerkorn

※2
Steven Klein. Still from Untitled, 791, 2014. Video, color, sound; 7 min. 48 sec. Courtesy of Steven Klein Studio. © Steven Klein 2014

Cover, ※3, ※4
Courtesy of Brooklyn Museum

Navigator
市川 暁子

フリーランスのジャーナリストとしてNYのファッションやカルチャー、ライフスタイルに関する記事を雑誌や新聞に寄稿。NYコレクションの取材は10年以上続けており、CFDA(アメリカファッション協議会)ファッション大賞のデザイナーもノミネートしている。ほか、並行してブラジルのサンパウロおよびリオのファッションウィーク取材も継続中。2007年には『NYのおみやげ』(ギャップジャパン)を、2013年にはブラジル人イラストレーター、フィリペ・ジャルジンの作品集『スケッチ&スナップ』(六燿社)を編集、出版した。www.originalslope.com

ニューヨーク初の猫カフェ「ミャオ・パーラー」。

金融街の新ランチスポット「ハドソン・イーツ」。


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