ブルックリンのブッシュウィック地区といえば、今、若手アーティストやクリエーターが続々と移住しているエリア。ここに日本の藍染め集団「BUAISOU(ぶあいそう)」がスタジオをオープンして話題になっています。
BUAISOUは徳島県上板町を拠点に、藍の栽培から、染料となる蒅(すくも)造り、藍染液の仕込みと染色、製品に仕上げるまでを行っています。もともとは日本の伝統的な藍染めに魅せられた渡邉健太(わたなべけんた)さんと楮覚郎(かじかくお)さんが2012年に設立しました。
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ブルックリンにスタジオをオープンするきっかけは2014年4月に渡邉さんが、四国の伝統を海外にプロモーションする団体「Home Island Project」の一環で、ニューヨーク滞在しワークショップを行なったこと。ブルックリンスタジオのディレクター 遠山清香さんによれば「非常に短い準備期間にもかかわらず、2日間で70人の方がワークショップを訪れてくださったことで、手応えを感じました」とのこと。その後藍甕を引き継ぎ、 2015年4月に正式にスタジオを構えました。
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これまでニューヨークでは約700名以上のニューヨーカーたちがワークショップに参加し日本の藍染めを体験しているそうです。参加者については「さすがアメリカ、デニム好きの方が多いです。ファッションやインテリア業界、自分でものづくりをしているという方もいらっしゃいます。年齢は子供から60代くらいの方まで本当にさまざまですが、20~30代の方が中心ですね。ブルックリンに限らず、マンハッタンやニュージャージーから来てくださる方も」。
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アメリカにもデニムなどインディゴ染は昔からありますが、藍染めとの相違点について「今デニムのほとんどは合成染料で染められていますが、かつてアメリカのデニムを染めていたインディゴは、Indigofera tinctoriaと呼ばれる植物から採取されていました。一方、徳島の藍染めはタデアイ(Polygonum tinctorum)という植物から抽出され、加工の方法も違います。中でもBUAISOUの藍染めは“地獄建て”と呼ばれる伝統的な技法をとっています。これは原料となるタデアイ発酵させ“すくも”という染料を作り、木灰汁、ふすま、石灰のみを入れて再度発酵させます。
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この方法が素晴らしいのは、すくもに含まれる不溶性のインディゴ成分を、バクテリアの力で溶性に変化させることです。発酵してバクテリアが元気に働いている藍染め液の中では、インディゴ成分は溶性で、実は黄色をしています。この液に布を浸し、インディゴを付着させます。布を液から出し空気に触れさせると、酸化し、インディゴが不溶性になると同時に、青色に変化します。
天然藍は大昔の人々が何らかの方法で見つけ出した、自然の化学変化による染色方法で、色移りがほとんどないという大きな特色があります。ニューヨークのワークショップに参加される方はインディゴが植物からできていることをご存知なかったという方も多く、染めたては緑色で酸化によって青色に変化するという過程に感動してくださいます」。
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Tシャツから剣玉、靴ひもや陶器類まで藍で染められたプロダクツも展開されており、ニューヨークでは現在イサム・ノグチの美術館Noguchi Museum、Atelier Corbet、スティーブンアランで販売中。ブルックリンのクラフトブームともあいまって、古き良き“ジャパン・ブルー”のカルチャーはますます浸透していきそうです。
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BUAISOU Brooklyn Studio
117 Grattan St. #101, Brooklyn, NY (ワークショップの参加、訪問は要予約)
http://www.buaisou-i.com