80年代にギャラリー街だったソーホーも、そして今ギャラリーの中心地といえるチェルシーも、もともとは倉庫や工場が建ち並ぶエリアでした。そして今、もっとも新しいギャラリー街はブルックリンのブッシュウィックという地区にあります。
イーストリバーを隔ててマンハッタンに一番近いウィリアムズバーグ地区も最早家賃がマンハッタン並みとなって、若手アーティストや新進ギャラリーはより東へと移っています。地下鉄LラインでMorgan Aveを降り、地上に出ると、壁にダイナミックなグラフィティを描いているボーイズたちに出くわします。
1
簡単にタグを描くといったものでなく、じっくりペイントしているというレベルの“壁画アート”で、中にはすごくクオリティの高いものもあります。私も写真に収めてインスタグラムにあげていたら、#bushwickのハッシュタグで発見したのか、描いた本人から「ありがとう!」というメッセージをもらいました。そんなクイックなレスポンスも今っぽいと思います。
2
このあたりはまだ殺風景な感じなのですが、すでにマンハッタン組の大御所ギャラリーも支部を作っています。現代アートのトップギャラリーのひとつLuhring Augustine(ルーリング・オーガスティン) は2012年にブッシュウィックにスペースを構えました。広々としたスペースは大きなスケールのインスタレーションアートなどを展示するのに向いています。9月19日からはRachel Whitereadの個展が開催予定です。
3
もっとアップカミングなアーティストを探すならThe BogArt(ザ・ボガート)へ行ってみてはいかがでしょうか?ここは2005年にオープンした非営利のスペースで、1階と地下に約20弱のギャラリーが並び、2階から上はアーティストの制作スタジオスペースになっています。
4
現代アートは理解するのにちょっとコツが要るかもしれません。私も専門家ではないのですが、美術史やアートの価値ということにはあまりとらわれず、心をまっさらに向き合うのがいいのではないか、と思います。自分が好みだな、と思ったアーティストの名前を覚えたり、値段があえば買ってみたり。
5
もしかしたら、その後、自分がピンときたアーティストがブレイクするかもしれないし、もしもしなかったとしてもそれはそれで、自分が好きなのだからそれでいいのではないかな、と思います。
6
ミニマルアートや色彩セラピー、フルクサスに影響を受けたアートなどを中心に中堅どころのアーティストの作品を扱っているのはOdetta (オデッタ)です。9月11日からは「SEEING SOUND」というタイトルのグループ展を予定しています。ギャラリー横のガレージスペースのシャッターには、男の子たちがたむろしてグラフィティを描いていました。本当にこういう光景があちらこちらでみられるのがブッシュウィックです。
7
ニューヨークのアートシーンは常に家賃の変遷にともなって中心地が変わっています。まずは倉庫や工場跡地などに貧乏なアーティストが住み着き、その界隈にギャラリーが出来、そしてファッションや飲食などの店ができ始めると一気に家賃があがります。するとアーティストたちは家賃を払いきれなくなって別の土地へ動いていく、ということの繰り返しです。ブッシュウィックも例に漏れず、日々開発され、そして家賃はあがっていくでしょう。中にはもちろん成功する人もいます、今はまだ壁にグラフィティを描く、原石だったとしても。
Luhring Augustine
25 Knicker Bocker Ave. Brooklyn, NY11237
T: 718-386-2746
http://www.luhringaugustine.com
The BogArt
56 Bogart St. Brooklyn, NY11206
T: 718-599-0800 Ex 12
http://56bogartstreet.com
Odetta
229 Cook St. Booklyn, NY11206
http://www.odettagallery.com