HELLO! FROM NEW YORK

アーケードの中にある隠れ家的ベーカリー。


Oct 14th, 2015

edit_akiko ichikawa

パリに行ったらまず食べたいのは、何ですか? 美味しいクロワッサンとバケット、という方も多いのではないでしょうか? もちろん日本にもパリ並みに美味しいベーカリーは多いと思います。しかし、ニューヨークにはこれまで残念ながら美味しいクロワッサンはほとんどありませんでした。この「Arcade Bakery(アーケードベーカリー)」が出来るまでは。

パリに行ったらまず食べたいのは、何ですか? 美味しいクロワッサンとバケット、という方も多いのではないでしょうか? もちろん日本にもパリ並みに美味しいベーカリーは多いと思います。しかし、ニューヨークにはこれまで残念ながら美味しいクロワッサンはほとんどありませんでした。この「Arcade Bakery(アーケードベーカリー)」が出来るまでは。

ここは店名のとおり、ビルのアーケード内にあるベーカリーです。1920年代に立てられたというクラシックなビルのエントランスの横には、小さく店名が書かれているだけ。それが看板の代わりです。ビルに一歩はいると、アーケード全体が焼きたてのパンの香りに包まれ、それだけで幸せな気持ちになってきます。

もともとは銀行のATMコーナーだったところを改造したベーカリーで、イートインスペースはもともとテキスタイル会社のディスプレー用ショーケースだったところに、折り畳み式のテーブルが設置されています。まさに“すきま産業”ともいえそうなコンセプトのユニークな店づくりです。

オーナーのロジャーさんは20年以上アメリカでパンづくりに携わってきた人です。フランスでも修業をし、最近まではニューヨークの料理学校でベーキングの先生もしていたそう。ロジャーさんによれば「ヨーロッパでは毎日、その日に食べるパンを近所のお店に買いに行く、というカルチャーが根付いている。ニューヨークにもそんなコミュニティに根ざしたベーカリーをつくりたいと思ったのが開店の理由です」ということです。

「昔はニューヨークにもたくさん街角のパン屋さんがあったのですが、家賃高騰により移民の人々がマンハッタンには住めなくなったりして、今はあまりないでしょう?」。ここではショップの隣に工房があり、毎日朝5時からさまざまな種類のパンを焼いているそうです。「パンというのは掘り下げて行くと本当に奥深いんです。世界を見渡せば実にいろんな種類があるし、粉の種類や焼き方、イースト菌の扱い方で全く違ったものにもなる。でも最近はグルテンフリーとか、アトキンダイエットとか、パンを目の敵みたいに食べない人もいるでしょう? 僕らの商売も楽じゃないですよ」。

パンの種類は定番メニューのほか、バブカというナッツなどを練り込んだジューイッシュのペイストリーなども。お昼時にはピザやサンドイッチもあります。私のお薦めはキヌワの粉を使ったローフ。かりっと焼かれた外皮とはうらはらに、中はしっとりもっちりしたテクスチャー。ほどよい酸味もあり、これとワインだけあれば充分、とさえ思えて来る味わい深さです。
まさにダイエット中の方には危険区域ともいえそうなベーカリーですが、10ドル以下でこんなに美味しいものもニューヨークにはなかなかないと思います。是非行ってみてください。

ARCADE BAKERY
220 Church St. btw Worth and Thomas , New York, NY
8:00~16:00 (月〜金)、土日定休
http://www.arcadebakery.com

Navigator
市川 暁子

フリーランスのジャーナリストとしてNYのファッションやカルチャー、ライフスタイルに関する記事を雑誌や新聞に寄稿。NYコレクションの取材は10年以上続けており、CFDA(アメリカファッション協議会)ファッション大賞のデザイナーもノミネートしている。ほか、並行してブラジルのサンパウロおよびリオのファッションウィーク取材も継続中。2007年には『NYのおみやげ』(ギャップジャパン)を、2013年にはブラジル人イラストレーター、フィリペ・ジャルジンの作品集『スケッチ&スナップ』(六燿社)を編集、出版した。
www.originalslope.com

大自然の香りをボトルにつめた「ジュニパーリッジ」。

アメリカのものづくりと人を支える「シャイノラ」。


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