アメリカ発祥のファッションアイテムとして世界中で親しまれているジーンズ。FIT(ファッション工科大)ミュージアムで、今、19世紀から現代まで約70点のジーンズとデニム製品を展示する展覧会「 Denim: Fashion’s Frontier」が開催中です。
展覧会は、ジーンズの中で最も有名、といっていいリーバイスの501からスタートします。展覧会場にはiPadも設置され、その作品にまつわる背景も詳しく説明されています。
もともとジーンズはリーバイスが19世紀のアメリカ西部で起ったゴールドラッシュのワーカーのために開発されたものでした。展覧会場に展示されている最も古いジーンズ(1840年代製)もその当時のものです。実際にはきこまれて色落ちしたり、破れた箇所にあてられた継ぎなど、今時のデザイナージーンズとは一線を画すリアリティ、そして機能美は展覧会場でも異彩を放っていました。
ほか、機能美とは対極ともいえるオートクチュール的な作品もあり、中でもジュンヤワタナベが2002年に製作したドレスのドラマティックなパターンは見事です。デニムという素材やジーンズのディティールはデザイナーたちにとってはインスピレーションの宝庫、といってもいいでしょう。
展覧会は時系列に展示されており、50年代の代表作としてはエルビス・プレスリーのようなルックとデニム素材のサーキュラースカートが展示されていました。
2000年代初頭から起ったデザイナージーンズ旋風も記憶に新しいところです。センタープリーツにブーツカットのシルエットを新たに提案した「7 for All Mankind(セブン・フォー・オールマンカインド)」はそれまで100ドル以下が相場だったジーンズを一気に2倍以上の価格で売ったことで新たな市場を開発しました。
また、同じころ、トム・フォードはジーンズをフェザーやビーズ刺繍で豪華に飾り、3000ドルもの値をつけたことで話題になっています。
ジーンズは時代のムーブメントとも深い関わりがあります。例えば、70年代のヒッピー世代が着たベルボトムや80年代のヒップホップミュージシャンが着たバギーなど。ジーンズのシルエットやフィニッシュがその時代性を表す、ということです。
展覧会の終わりには日本製のジーンズも展示されていました。今、デニム産地として日本はそのモノづくりの確かさや高い技術から多くのブランドやデザイナーを魅了しています。日本のメンズ誌のいわゆる“オシャレスナップ”のページも展示されていましたが、日本男性のデニムの着こなしとこだわりは群を抜いている、ということなのでしょう。アメリカで発祥したジーンズですが、今や日本がそのスタイルや製造を牽引している、というのも興味深いことです。
Denim: Fashion’s Frontier(3月7日まで)
The Museum at FIT
Seventh Avenue at 27th St. New York, NY
T: (212) 217-7999
営業時間: 12–8 pm (火〜金)、10 am–5 pm(土)、日・月・祝祭日休
Photos: Image courtesy of The Museum at FIT.
Cover, Installation view of Denim: Fashion’s Frontier
1, View of entrance featuring Levi Strauss & Co. 501® jeans.
2, (Left to right) Man’s work pants, circa 1840, women’s work jacket, circa 1850
3, Comme des Garçons (Junya Watanabe), dress, repurposed denim, spring 2002, Japan, museum purchase. Photograph by William Palmer.
4, (Left to right) Levi Strauss & Co. 501® jeans, 1950s, homemade denim “poodle” skit, circa 1952
5, (Left to right) 7 For All Mankind “bootcut” jeans, circa 2004, Gucci by Tom Ford ensemble, spring 1999, Acne “Hex” jeans, 2007
6, Installation view of Denim: Fashion’s Frontier