HELLO! FROM NEW YORK

デジタル時代のショーの行方。2016年秋冬NYコレ開催。


Feb 24th, 2016

edit_akiko ichikawa

2016年NY秋冬コレクションが開催されました。それまでわりと暖冬だったニューヨークですが、 コレクションが開幕するやいなや、零下の日々に突入。メイン会場はミッドタウンとダウンタウンの2箇所に分かれ、それ以外にもデザイナーの趣向によりさまざまな会場でショーが繰り広げられました。

2016年NY秋冬コレクションが開催されました。それまでわりと暖冬だったニューヨークですが、 コレクションが開幕するやいなや、零下の日々に突入。メイン会場はミッドタウンとダウンタウンの2箇所に分かれ、それ以外にもデザイナーの趣向によりさまざまな会場でショーが繰り広げられました。

今季、最も話題にのぼったのは、“オンタイム”の商品をランウェイにのせるということ。つまりキャットウォークで発表されたアイテムが、その日のうちに店頭に並んでいたり、オンラインで発売されたりするということです。

最近ではファッションショーのフィナーレで拍手が起こることはなく、客席からは、スマートフォンを掲げてモデルたちの写真を撮ろうとするというのが、おなじみの光景となりました。

そもそもショーでは半年先に店頭に並ぶ商品が発表されるわけですが、最近ではインスタグラムやツイッターなどのソーシャルメディアによって、瞬時に情報が拡散されています。加えてショーの全てをネットで生中継する、というブランドも増えています。

それはお客さんがインスタや動画を見てそのアイテムが欲しいと思っても手に入らない、つまり売り逃がしをしているともいえる状況だったわけです。そこでデザイナーたちはショーのルックにすぐに買える商品をミックスしたり(マイケルコースなど)、発表するシーズン自体を変えて、今、2016年春夏のショーをするという人(レベッカミンコフなど)も現れました。

モデルがキャットウォークを歩くショー形式でなく、プレゼンテーション形式で新作を発表するデザイナーも増えているようです。バッグと靴のブランド「マンスールガブリエル」はソーホーのアートギャラリーを会場にして、とても“インスタジェニック”ともいえるプレゼンテーションを開催しました。

会場の前には相変わらず、スタイリストやバイヤーなどファッショナブルな招待客たちのストリートスタイルを狙うフォトグラファーたちでごった返しています。

今回のファッションウィークでは気温が-16度まで下がった日もありましたが、相変わらず素足にハイヒール、といった出で立ちのツワモノも見受けられました。

そして、ショーやプレゼンといった枠にはまらない発表をしたのは、ヒップホップミュージシャンのカニエ・ウェストです。最近アディダスからYEEZYというラインを出していますが、その16年秋冬コレクションを発表するためにマディソン・スクエア・ガーデンに1,000人以上のモデルを並べました。これはヴァネッサ・ビークロフトという現代美術のアーティストが演出したもので、同時にカニエの新アルバムの発表も兼ねており、なんと1時間以上もの“ショー”でした。

2万人が収容できる大会場で繰り広げられたスペクタクルですが、カニエ自身の生の歌声は聴けず、ひたすらじっと立っているモデルたちは、遥か彼方にいて新作の服自体はよく見えず。ファンならまだしも、ファッション関係者の中には途中退場する人も多かったようです。

ファッションショーのあり方について、また売り場やお客さんとコレクションをどう関連づけ、提案していくかといった視点など、今季のNYコレクションはいろいろな意味で考えさせられることの多いシーズンだった気がします。

Navigator
市川 暁子

フリーランスのジャーナリストとしてNYのファッションやカルチャー、ライフスタイルに関する記事を雑誌や新聞に寄稿。NYコレクションの取材は10年以上続けており、CFDA(アメリカファッション協議会)ファッション大賞のデザイナーもノミネートしている。ほか、並行してブラジルのサンパウロおよびリオのファッションウィーク取材も継続中。2007年には『NYのおみやげ』(ギャップジャパン)を、2013年にはブラジル人イラストレーター、フィリペ・ジャルジンの作品集『スケッチ&スナップ』(六燿社)を編集、出版した。
www.originalslope.com

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