美人白書

Vol.06 西邨マユミ


Feb 27th, 2013

photo_ satoko imazu
hair&make_shinobu igari (BEAUTRIUM)
text_mayumi shiina(rhino_inc)

マドンナのパーソナルシェフを12年にわたり務める西邨マユミさん。マクロビオティックを通して世界を健康にしたいと話す、彼女のパワーの源とは。また西邨さんが考える“美しさ”とは何なのかお話を伺いました。

マドンナの美と健康を支える、西邨マユミさん

人生を変えた一冊の本

ーマクロビオティックを始めたきっかけを教えてください。

健康な子供を産んで、ハッピーな家庭を作りたいと思ったことがきっかけでした。その為に具体的にどうしたらいいのか考えていた頃、ちょうど手にした本に”女性は体の中に羊水という海を持つ性である”という一文を見つけて。目の前にある故郷の海と、体の中にある海(羊水)がオーバーラップしました。

当時、環境破壊が始まっており私が育った綺麗な島の海にも廃オイルが浮いているという状況が広がっていたんです。汚いものを捨てるから、海が汚れる。ということは、自分の体の中の海(羊水)も悪いもの(食べ物)を取り入れたら、汚れるのではないかと考え、まずはベジタリアンの道を選びました。

そんな食に対する考えを見直していた時期に、当時アメリカにいたボーイフレンドが桜沢如一氏の『新食養療法』という本を薦めてくれたんです。健康な子供を産む為にどうしたらいいか、誰も教えてくれない。でも、『新食養療法』には、私が欲していた全ての答えが書いてあったんです。

『新食養療法』

著者はマクロビオティックの創始者・哲学者である故・桜沢如一氏。彼が設立したマクロビオティックの普及団体、「真生活協会」から、西邨さんのマクロビオティックの師であり、マクロビオティックを代表する・久司道夫氏が育った。

ーその本がマクロビオティックを知ったきっかけだったんですね。

『新食養療法』を読んで、始めて”マクロビオティック”という言葉を知りました。本格的にマクロビオティックを勉強しようと思い、ボストンで久司道夫先生が開講しているマクロビオティックの専門学校、クシ・インスティテュートに行ってみたいと強く思ったんです。『新食養療法』に出会うまで、真剣に何かをやりたい! アメリカに行きたい! なんて思ったことがありませんでした(笑)。

西邨さんが作ったマドンナの顔を模した、マクロビオティック・カップケーキ

マドンナとの出会い

ー学校を卒業して、すぐにシェフの仕事を始めたんですか?

卒業してからは、がん患者の方や、食事で病気を治したいという方に向けて、食事方法のコーチングをしていました。

ーコーチングの仕事を経て、マドンナのパーソナルシェフになったんですね。

マドンナと知り合いの友人がおり、その友人が「マドンナが、マクロビオティックを家庭に取り入れたいと考え、パーソナルシェフを探している」と教えてくれました。そこで友人が声をかけてくれ、試しに履歴書を提出しました。

ー志願した人が多くいたのでは?

志願者の中で、たまたま私だけマクロビオティックで子供を育てた経験があったので、声がかかったみたいです。当時、マドンナも、マクロビオティックで育てたいという思いがあったようでした。

ー声がかかった時は、どのような気持ちでした?

実際に彼女がステージに立っている姿を見たことがなかったので、あまり気負いはしなかったです(笑)。もちろん、彼女の名前は当然知っていましたが、彼女が売れ出した84年当時、私自身、子供を出産、がんの患者さんのコーチング、マクロビオティックの勉強と、のめり込んでいた時期で、メジャーなミュージックを聴いていなかったものですから、あまり彼女の事を詳しくは知らなかったというのが正直なところです。

ー初めは、一週間のトライアルだったと聞きました。

そう、トライアルだったんですよ(笑)。一週間を過ぎた頃、「ツアーに出るので、一緒に来ないか?」と声をかけていただき、ツアーに同行しました。ツアーから戻ると、次は「今から映画を撮るから、撮影現場に来てくれ」と言われ… …。撮影が終わる頃には、「マユミ、今ロンドンに家を建てているから、一緒に住まないか」と。

「キッチンもこれから作るところだし、マユミが好きなように作るから一緒に来ないか?」とマドンナが誘ってくれたので、これはついて行くべきだと思ったんです(笑)。当時、学校に通っていた子供たちをアメリカに置いて行くことに抵抗があったのですが、上の娘に相談したら、賛成してくれたので、その一言に背中を押され、ロンドンについて行くことにしました。

ホテルに滞在する時は、厨房を借りて料理をつくることもしばしば。そんなシチュエーションで、ホテルのシェフ達と。

ーついて行きたい! と突き動かされた、マドンナの魅力は何ですか?

マドンナは勉強もするし、仕事に、遊びにと、とにかく忙しい女性です。体3つぐらい必要なんじゃないの(笑)? というぐらい、本当にパワフルです。アメリカのビジネスをしている女性の典型だと思いますね。

彼女のパーソナルシェフを続けたいと思ったのも、彼女のように、世界的に著名な方がマクロビオティックを実践することで、多くの人に知ってもらえ、マクロビオティックを広めることができると思ったからなんです。”マクロビオティックをもっと沢山の人に知ってもらいたい”という思いが、彼女のもとで働く気持ちを突き動かしました。

マクロビオティックって、格好いいんです!

ー西邨さんも普段の食事にマクロビオティックを取り入れているんですか?

基本的には自分が作ったものを食べます。ケチですね(笑)。外に食べに行っても、クオリティーが高いとは限らないし、お店に行っても、「こんなのにお金を出すのはもったいない!」て、思ってしまうんです(笑)。

友達に誘われれば外に食べに行きますけれど、自分から、「おお、行こう!」という気にはなれません。今、ニューヨークでは日本のラーメン屋が大変ブームで、友人に誘われて食べに行ったのですが、やはり満足できませんでした(苦笑)。

ー西邨さんもラーメンを食べるんですね! ちょっと驚きました。

私、”プチマクロ”なので(笑)。もともと色んな食事が好きですし、新しい物好きなんですよ。ではなぜ、マクロビオティックを実践しているのか?というと、私にとって”一番格好いい”と思える食事だったからなんです。

ーマクロビオティックというと、”オーガニック”とか”優しい”というイメージがあるのですが、”格好いい”という考え方は新鮮です。

マクロビオティックには”自分たちが健康になることによって、世界中が健康になる”という考え方があるのですが、その考え方が「格好いいなぁ」と思います。一人一人が健康になれば、国が健康になり、世界が健康になる。世界の平和を簡単な図式で導けるのがマクロビオティックなんです。なんか格好良くないですか(笑)?

ファッションに目覚めた高校時代

ー今日は着物ですが、普段から着る機会が多いんですか?

日本にいる時は、なるべく着物を着るようにしています。アメリカで着物を着てひょいひょい歩くと、お茶の先生とか、そういう仕事をしていない限り浮いちゃうみたいで。

アメリカに行ったらジーンズばっかりなので、日本にいる時は着物を着たいと思っているんです。洋服を着る時とは違う筋肉を使うので、いい運動になるんですよね。お洋服だと、せいぜい後ろのジッパーを上げるぐらいですからね。

ー昔から着物が好きだったんですか?

私の実家は、旅館を営んでいるんです。そのおかげもあって、高校生の頃には自分で着付けできるようになっていて。でも好きじゃなかったですね。歩きにくいし。それこそ、高校生の頃は、姉の影響で「アンアン」とか「ノンノ」といったファッション雑誌を読んでいたので、普通の若者が着るようなファッションに夢中でした。20歳の頃には、当時人気だった、「コム・デ・ギャルソン」の洋服一式を買ったことをよく覚えています。

「グレイトフル・デッド」のコンサートに行ってからは、ヒッピー風の長いスカートも着ていましたね。今でも、その頃の名残があってか、アメリカンをベースにしながら、日本のテイストで作られているものが好きでよく着ています。

ニューヨークの自宅キッチンでの一枚。

女性が美しくあるために

ーアメリカと比べて、日本女性の食生活をどう思いますか?

日本もアメリカも共通して、忙しい人たちはお家で料理をする機会が少ないと思います。ニューヨークのように大きな街には、オーガニックのお店がたくさんあるので食べる物を選択できるんですが、日本にはそのチョイスが、少な過ぎるかなと思います。

ー私たちでも、簡単に取り入れられるマクロビオティック法はありますか?

家でお料理をする方は塩を”海の塩”に、醗酵調味料である味噌、醤油、みりんなどを古式醸造で作られた物に変えることをお勧めします。それに合わせて、主食を玄米、雑穀などの全粒穀物にすると、すぐに体の変化を感じられると思いますよ。

外食をする機会が多い方は、植物性を中心にした食べ方に移行し、品質の良いものを心がけると良いと思います。そしてすぐに始められるのが、一口を30回以上よく噛んで食べること! すごく簡単ですが、大切なことです。


最後に西邨 マユミさんから
“美しくなるためのメッセージ”

マクロビオティックの一番大事なことに、”自分で責任をとる”という教えがあるのですが、人の言うことを「本当かな?」と疑ってみることは大切だと思います。私自身、納得し本当に理解できた! と思えてから実際に行動します。そういう意味では、自分の心に正直に生きていると思います。

今月の美人
西邨 マユミ

1956年愛知県篠島生まれ。1982年に渡米し、マクロビオティックの世界的権威である久司道夫氏の元で学ぶ。その後、クシインスティティュート・ベケット校の設立に参加。開校後、同校の料理講師および料理主任に就任し、同時にガン患者への料理指導を行う。2001 年より、マドンナのパーソナルシェフを務める。以降、ロンドン、ロサンゼルス、ニューヨークを中心に活動し、ゴア元副大統領、スティングなど数々のセレブリティにマクロビオティックの食事を提供する。2011年にはキューバのフィンレイ・インスティテュート(ワクチン研究所)等でマクロビオティック指導。有機農業、海洋調査などキューバ政府が推進するマクロビオティック振興のために現地調査に協力する。 現在、マドンナのパーソナルシェフを務めながら、世界各国でマクロビオティックを伝える活動を積極的に行っている。また、誰でも実践可能な「プチマクロ」を提唱し、その活動の場は世界各国、多岐に及ぶ。

Vol.07 陣内恵理子

Vol.05 アン ミカ


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