美人白書

Vol.03 井上圭子


Nov 28th, 2012

photo_ masaharu arisaka (STUH)
hair&make_saho hasegawa
text_mayumi shiina(rhino_inc)

“知性あふれる、スタイリッシュで魅力的な女性”にご登場いただき“美しさ”の秘訣についてお話を伺うこの企画。第三回目のゲストはオルガニストの井上圭子さん。世界を舞台に活躍する彼女に音楽家として、また女性として、美しく輝き続けるための秘訣を伺いました。

井上圭子さんの美しさをひも解く

オルガニストという職業

音楽は国境を越える世界共通の言葉

ーオルガニストという職業を選ばれたきっかけは何だったのですか。

ミッション系の学校に通っていた時に、毎日聞いていたオルガンの音にだんだん心を惹かれていきました。流れていた曲は確かバッハだったと思います。当時おてんばだった私は、足を使って音を奏でるオルガンの演奏方法にも面白そうだなぁと興味を持ったのがきっかけです。

ー撮影中オルガンを演奏してくださった井上さん。その音の迫力に感動してしまいました。

音楽って国や文化の違い、言葉を越えて人に感動を与えることができる表現の一つだと思います。音楽は “世界共通の言葉”と言えるのではないでしょうか。そんな”世界共通の言葉”を持てて、私は幸せだと思いますし、大切にしたい宝物だなって思います。音楽だけでなく、アートや洋服も同じですよね。言葉がなくても伝わる自己表現の一つだと思います。

ーオルガニストというお仕事に”ドレスコード”はあるのでしょうか。

オルガニストの仕事に”ドレスコード”というものは特にありません。楽器の色でしたり、その日の用途に合わせて洋服を選びます。演奏会に行かれた方は目にしたことがあると思いますが、オルガニストは大抵、客席から一番離れた場所に後ろ向きで座っていますよね。なので、楽器の前に座っても映える色だったり、スパンコールなどキラッと光るものをステージ衣装に選んだりと、気にかけています。

井上さんの考える” 美しさ”とは

意志や主張を持ち、日々を輝かせること

ー美しい女性とはどのような女性だと思いますか。

仕事でも趣味でも、どんな物事に対しても、生きがいを持って好きなことを楽しみながら邁進している人を見ると、美しいなと感じます。常に目標や夢を持つことで、キラキラ輝けると思います。また、意志や主張をはっきり持っている人も素敵ですね。 “着る洋服を選ぶ”という、日々の習慣一つとっても、大切な自己表現、意思の主張の手段だと思います。

ー美しくあるために努力されていること、また心がけていることは何ですか。

何時でもベストをつくすこと! どんな時でも最善を尽くせるよう、日々努力することを心がけています。ベストな自分でいるためには、健康でいることが大切。バランスの良い食事と体力づくりを大切にしています。オルガンを弾く時は長時間、同じ姿勢なので、肩こりの予防の為にも毎日プールで泳いだり、週に2回程ジムで筋トレもしています。もともと体を動かすことが好きではありますが実は、今朝もプールで泳いで来ました。(笑)

ファッションとの出会い

制服のコーディネートを楽しんだ学生時代

ーファッションは自己表現の一つだと先ほどお伺いしましたが、井上さんがファッションに興味を持たれたきっかけは何ですか。

小・中・高と一貫制の学校で制服のブレザーが指定だったのですが、合わせるスカートは自由に選ぶことができました。学校のお友達や先輩にお洒落な人が多かったので、その子達が着ているスカートを見て「欲しいな。着たいな」と憧れていました。それがファッションとの出会いだったかも知れません。スカート丈や靴も自由だったので自分でコーディネートを楽しんでいました。

ー制服のスカートで組み合わせを楽しんでいたんですね。

学生の頃はタータンチェックの “YORK”というお店が好きで、そのブランドのスカートを穿いていました。でもいつも買っていたのではなく、ほとんどが母の手作りで。友達が着ていた憧れの柄やチェック柄や紺の無地といった、お気に入りの生地を買ってきて、母に仕立ててもらいました。夏用にはデニム地のものから、黄色や赤色のスカートなど、たくさん作ってもらっていました。今でも大切にしまってあります。

ファッションのこだわり

仕事や年齢に合わせた洋服を選ぶ

ー現在はどのような洋服を着ることが多いのでしょうか。

普段は、黒のジャケットに黒のパンツというスタイルが多いですね。冠婚葬祭で弾くことも多いので、そういった場では重宝します。そして「良いものを永く着る」ことを大切にしています。例えば昔買った、お気に入りのジャケットに、今流行のパンツを合わせてみたり。学生時代、指定のブレザーに様々なスカートを組み合わせて、毎日のコーディネートを楽しんでいた学生時代に由来するのかも知れませんね。

ー井上さんが憧れる、ファッションアイコンとは。

ジョルジオ・アルマーニ。デザイナーとしても、また彼のライフスタイルもお洒落だと思いますが、慈善事業も行い社会貢献している、そうした姿勢に好感が持てます。先ほどの「美しい女性の条件」と同じく、意志や主張がはっきりしている部分も憧れている理由です。

ファッションではありませんが、同じ理由でポルシェも好きです。先日、ポルシェ博物館で「フェルディナンド・ポルシェ」の私物の展示を見たのですが、展示されていた全てが魅力で、自然を愛した彼のライフスタイルにとても共感を覚えました。クルマをつくったきっかけも、夢で見たクルマをどうしてもカタチにしたくなったそうで、夢を実現してしまう発想と行動力も素敵だな、と感じました。

ドイツ・シュツットガルトにあるポルシェ博物館にて撮影した、初代ポルシェの原型(1939年)。
「時代の先取りを感じる、Ferdinand Porscheの斬新なデザインは、革命的です」

海外から見た日本人女性の美しさとは

魅力的な黒髪。ヘアスタイルの美しさ。

ー演奏会で海外に行かれる機会が多いかと思いますが、海外から見た日本女性の魅力とは何でしょうか。

日本女性の黒髪は神秘的でとても美しいと思います。私自身もヘアスタイルは大切だと考えています。もしかしたら、私にとって洋服以上に大切かも知れません。(笑)10年以上、お世話になっている美容師さんに、髪質や髪の流れ、顔の形や雰囲気に合わせてヘアスタイルを作っていただいています。その美容師さん曰く、「ヘアスタイルは創作だ!」だそうで。毎回流行を取り入れながら、クリエイティブな感覚で作っていただいています。

ファッションは世界的に見ると、流行しているデザインはあまり変わりませんが、色選びに関しては日本と海外ではちょっと変わりますよね。もしかしたら髪の毛の色と洋服の相性が重要なのかも知れません。

パリで最も美しい外装の教会として有名なサン・トゥスタッシュ教会にて。「パリ市の招きで、演奏会に参加しました」
写真はリハーサル時の一コマ。

これからチャレンジしたいこと

今の私だからこそ、できることを。

ー世界中を旅してきた井上さん。今興味のあること、これからチャレンジしたいことは何ですか。

ヨーロッパの文化や歴史にとても惹かれています。学生時代、3年ほどドイツに留学していたのですが、その時に出会った人々の、建築や歴史、もちろん音楽といった文化を大切にしている考え方に学ぶべきところを感じ、同時に共感できる部分がありました。

留学時代を過ごしたドイツ・リューベックでの写真。
「留学で訪れて以来、その文化や人々に魅せられて、機会をみつけては、渡独するようにしています」

これからは、オルガニストの仕事を続けながら、色々なことにチャレンジしたいです。留学していた学生時代は、目の前の課題をクリアすることで精一杯で、帰国してからは演奏活動が忙しかったので、これからはその経験を糧にして、常に今の私にしかできないことを探して行きたいと思います。


最後に井上さんから
“美しくなるためのメッセージ”

洋服を着ることも自己表現の一つです。朝、洋服選びの時に「なんでもいい」と妥協せずに「どうしても着たい」と思える一着を選ぶことが大切だと思います。それは高価な服を着る、という意味ではなく自分と共感できるセンス、こだわり、意志を持つ洋服を選ぶこと。私自身、これからもファッションを楽しんで行きたいです。

今月の美人
井上 圭子

東京藝術大学オルガン科、同大学院修了後、ドイツフライブルク音楽大学に留学。ソロ科を卒業、国家演奏家試験に合格、ドイツはじめ、フランス、デンマ-ク、アメリカ、スイス、ベルギー、チェコ、ポ-ランド、香港など各地の音楽祭や演奏会に招かれて演奏。国内では全国各地のホ-ルで演奏、オーケストラとの共演も多い。最近は演奏会の企画など幅を広げ活躍している。NHK「芸術劇場」「名曲アルバム」などテレビ、FMなどのメディアにも出演。日本コロムビアより、10枚のCDを発売。2013年には第8回Mikael Tariverdiev国際コンクールの審査員に招かれている。

Vol.04 草刈民代

Vol.02 高嶋ちさ子


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