美人白書

Vol.02 高嶋ちさ子


Oct 24th, 2012

photo_ masaharu arisaka (STUH)
stylist_yuriko tomioka
hair&make_yusuke kato(LA DONNA)
text_mayumi shiina(rhino_inc)

“知性にあふれる、スタイリッシュで魅力的な女性”にご登場いただき“美しさ”の秘訣についてお話を伺うこの企画。第二回目はヴァイオリニストの高嶋ちさ子さん。凛とした強さを持つ彼女の美しさの秘密を伺いました。

高嶋ちさ子さんの美しさを構成するものとは

高嶋さんが考える美しさとは

内面から滲み出る清潔感。誠実さと潔さ。

ー美しい女性ってどんな女性だと思われますか?

難しいなぁ。実は、普段から人を見る時に、男・女って区別をすることがあまりなくって。「男だからこう、女だからこう」ってあまり考えないんです。まぁ、女性は着飾ることで、外見を誤魔化すことが上手じゃないですか(笑)。でも清潔感だけは誤魔化しようがない。見た目だけじゃなく、内面から滲み出てくる清潔感って、美しさに通じるのかなと思います。

ー美しい音楽を奏でるヴァイオリニスト、高嶋さんにとって”美しさ”という概念は?

誤魔化したり、小手先だけでその場逃れをするような、音楽をする人もいるんですけど、そういう”卑怯”な人が一番汚いと思うんですね。”誠実さ”のある音楽だったり、人間だったりを美しく感じます。潔さとかそういったところにも美しさを感じますね。

ーお話を聞いていると”武士の奥方”のようなイメージがわきました。

そうそう!そうなんですよ(笑)私、武士道が大好きなんですよね。子供にも空手をやらせているんですけど、5歳になる息子は、「本当の強さとは優しさだ」ってずっと言っているんです。そんな息子に言わせると、
「パパは強くて優しい。ママはただ強くて怖い。」ですって(笑)。人にはそういう優しさを求めるんですけど、自分はとても出来ないですね。

今の高嶋さんを形成するものとは。

祖母からもらった、温かく力強い言葉の数々

ー高嶋さんがそのように考える切っ掛けはなんだったんでしょうか。

私の祖母がよく言っていたんですが、「気の弱い女とお化けは出る、出ると言っても出た試しがない!」んですって。出るようで出ないのが気の弱い女性とお化けなんだとか(笑)。私も気が弱い女性って見たこと無いですよ。女性ってそういう気の強さを隠しますよね。そしてこの言葉には続きがあって、「嘘だぁ〜」と言う私に祖母はこう続けるんです。「私は嘘と坊主の頭はゆったことがない!」って。(笑)私は、お婆ちゃん子だったので祖母の言葉は凄く印象に残っています。

祖母には、「女は隙を見せてはいけない!」とよく言われていました。男の子とデートに行く時は、いつも鏡の前に立たされて、「このまま出て行って、このまま帰ってきなさい!」って言われるんですね。あの時は良く意味が分からなかったんですけど、やましいことをして帰って来た時って、多分鏡の前に立てないと思うし、何か変わったんじゃないかってドキドキするじゃないですか。だからそういう意味で言っていたんじゃないかなって。後は、男にこびを売るなとか。そんなことばっかり言っていたら縁遠くなるだけなんですけどね。(笑)

ー色んな言葉が今の高嶋さんを支えているんですね。

そうですね。ひっかかる言葉とそうでない言葉はありますが。心にひっかかった言葉は、ずっと大切にしています。他にも心に残っている祖母の言葉が、「早く行きたいなら、一人で行きなさい。遠くに行きたいなら、友達と行きなさい」って。「友達がいると辛くても、遠くても乗り越えられる。だから友達は大切にしなさい!」って素敵な言葉ですよね。子供にもしっかり伝えていきたいと思っています。

美しくあるために、努力されていることは

気力と体力を向上させること

ー美しい女性であるために努力されていることはありますか

かけ離れていると思われるかも知れませんが、私は”体力”がとても大切だと思うんです。体力が落ちると気力も落ちるんですよね。そうするとネガティブな思考になったり、人を羨んだりしちゃうんです。でも体力があって、元気だと凄くポジティブにいられる。なので私は、気力と体力を向上させることを常に考えています。だって人間って神様から与えられている時間って24時間って決まっているじゃないですか。そんな中でいかに抜きん出るかって考えた時に、1度に2つのことが出来れば、抜きん出ることができるんです。そうなると体力が重要になってくるわけです。

子供の頃、ウチのトイレには「時は金なり!」って張り紙がしてあったんです(笑)。本当に、ゆっくり出来ないんですよね。私の姉はダウン症なんですけど、姉もこういう家庭で育ったから、その精神が染み付いているんですよ。家族みんなが時間を無駄にしないように動いているんです。ウチの親は「財産は残せないから教育を残す!」っていう信条だったみたいで。まぁどこまで残されているか分からないですけどね。

ーそんな高嶋さんのパワーの源はなんですか?

生き急いでいるっていうか、私の旦那はよく「死に急いでいる」って私のことを言うんですけど(笑)とにかく「時間が足りない!あれもやりたい、これもやりたい!」って。とにかく色んなことに興味があるんですね。よく、欲の固まりのように言われるんですけど。今は子育てに忙しくて、趣味は持たないようにしているんです。でも私も40を過ぎて、既に人生半分終わったんですよね。そう考えると、やりたいことを後の半分で、果たして全部できるのだろうか!?って思うんです。そういう興味とか関心が行動力の源なんですよね。

ファッションのこだわりとは
チノパンに襟付きのシャツとか、本当に古典的な格好が好きなんです
ーファッションのこだわりはありますか?
今日はピンクをお召しですね。
珍しいんですよ(笑)普段は青とかばっかり着ているんですよ。もともと青が好きで。配色で言うと、青とオレンジっていう配色が一番好きなんです。

でもそんな配色のアイテムってラガーシャツくらいしかないんですけどね(笑)ファッションは、時代が変わってもついて行ける服というか、まぁ年齢が年齢なので奇をてらった格好とかは好きじゃないんですけど、チノパンに襟付きのシャツとか、本当に古典的な格好が好きなんです。それじゃ世の中に通用しないのがわかっているので、チノパンはチノパンでも今年っぽいデザインとかを毎年選ぶようにしています。

ー愛用しているアイテムはありますか。

ファッションって毎年凄く変わるので、色、柄がほぼ一緒でも、今年の”形”にしないと人前に立った時に古くさく見えてしまうんですよね。ボーダーでも今年のボーダーがあって、太さが去年とは違ったりしますし。なので何十年も使っています!というアイテムは一個もないような気がします。ヘアスタイルとかも全然こだわりがなくって。この間も、夏休みに子供と遊ぶ為に短く切ったら、ヘアメイクさんに短すぎるって怒られてしまいました。

子育てと仕事のバランスをとる方法とは

しっかりコミュニケーションをとって、愛情たっぷりのご飯を食べさせる

ー年間で100回近く公演を行うと伺いました。
ご家族とお仕事のバランスはどのように取られているんですか?

まぁ家に帰るとどうしても母親になってしまいますからね。専業母をやっている人たちには本当に頭が下がる思いです。私とかはすぐ、苦しくなるんですね。休みの日に、「どこにいくの?何するの?」って言われると、疲れてしまって早く仕事に行きたい!って思う。仕事が逃げ道っていうわけではないですけど、仕事があることをとてもありがたく感じます。凄く良いバランスで子育て出来ているということですね。

ー子育てのコツは何ですか。

私の場合は、”立っている者は親でも使え!”ですよ(笑)自分の親でも、旦那の親でも。子育ては、家族総出でしなくちゃ!専業主婦の人はよく「子供と接する時間が少なくて、子供が可愛そう」とか言うんですけど、保育園にあずけたとしても、それ以外の時間でしっかりコミュニケーションをとって、愛情たっぷりのご飯を食べさせる。そういう子育てをするほうがいいと思います。

これから挑戦したいこととは

クラシックはまだまだ可能性のある舞台

ー今後チャレンジされたいことはありますか。

今は子育てにしか興味がないので、チャレンジしたいことと言われると、息子にチェロを習わせたいとかですかね。自分で何かしたい!と思うことって、今はあまりないですね。多分子育てが終わってから、やりたいこととかが出てくるかもしれないですけど。仕事のことだけで言うと、現状維持ですかね。

ーたくさんのコンサートを企画されていますよね。

色んな世代の人が楽しめるコンサートを企画しています。世界的にみてもクラシックを聞く人の数がどんどん減っているんですよね。そうなるとこっちも死活問題なので、もっともっと色んな人に聞いて欲しいです。プライベートでは、色んな人のコンサートに行くようにしています。クラシックのコンサートって照明一つの舞台に出て、お辞儀をして演奏を行うっていうのがスタンダードになっているから、それ以外のことをすると、お客さんの食らい付きが全然違うんです。そう考えると、凄い可能性がある舞台だと思うんですよね。まだまだやりたいこと、やれることを実現できると思います。


最後に高嶋さんが考える“美さ”とは

目標を持つことですかね。間近な目標でもいいですし、10年後でもいいので。その目標から逆算して今を考えてみると、着ている服も変わってくると思うんです。そうすると自ずと自分が見えてくるし、無駄もないと思うんです。5年後何していたいかな?って考えると自ずと道が見えてきますよ。今やっていることを無駄で終わらせるのか、次に繋げるのかは自分次第なので。。

今月の美人
高嶋 ちさ子

東京都出身。6歳からヴァイオリンを始め、これまでに徳永二男、江藤俊哉、ショーコ・アキ・アールの各氏に師事。桐朋学園女子高等学校音楽科、同大学を経て、1991年イェール大学音楽学部大学院に奨学生として入学。同大学院修士課程アーティスト・ディプロマコースを卒業。 '94年マイケル・ティルソン・トーマス率いるマイアミのオーケストラ、ニュー・ワールド・シンフォニー(NWS)に入団。 一方日本では'95年5月にCDデビュー。97年本拠地を日本に移し、本格的に活動を始める。 現在、演奏活動を中心としながらも、コンサートのプロデュース、テレビ・ラジオ番組の出演など、活動の場は更に拡がりを見せている。

Vol.03 井上圭子

Vol.01 前田典子


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