HELLO! FROM NEW YORK

哀しみのときもファッショナブルに、喪服の展覧会が開催。


Nov 19th, 2014

edit_akiko ichikawa

メトロポリタン美術館内にこの春オープンしたアナウィンターコスチュームセンターで19世紀の喪服をテーマにした展覧会「彼女は死がよく似合う:喪服の一世紀」が始まりました。これは1815〜1915年にアメリカやイギリスなどで着用された約30着の喪服を時系列に展示した企画で、中には英国のヴィクトリア女王やアレクサンドラ女王が着用したものも含まれています。ほか、喪服にコーディネートするジュエリーなどアクセサリー類の展示も。

メトロポリタン美術館内にこの春オープンしたアナ・ウィンター・コスチューム・センターで、19世紀の喪服をテーマにした展覧会「彼女は死がよく似合う:喪服の一世紀」が始まりました。これは1815〜1915年にアメリカやイギリスなどで着用された約30着の喪服を時系列に展示した企画で、中には英国のヴィクトリア女王やアレクサンドラ女王が着用したものも含まれています。ほか、喪服にコーディネートするジュエリーなどアクセサリー類の展示も。

19世紀といえば死産や子どもの発育不良などもあって平均寿命は50歳に満たなかったといわれています。そのため葬儀の頻度も高く、喪服の需要も高かったといえるでしょう。そんな背景から喪服のデザインはかなり高度に趣向を凝らしたものになっていきます。そのデザインは着る人の品格や趣味、社会的階層などを表すための手段であった、ともいわれているほどです。

当時の葬儀の模様をとらえた写真を見ると、参列者たちは羽根飾りのついた大きな帽子やシルクハットを被り、パラソルを小脇にかかえて、何ともスタイリッシュな装いだということにも驚かされます。そして、服喪の間に着用するドレスのゴージャスさにも目を見張ります。中には黒やグレイでなく、ビンクやパープルといったトーンの素材に細かなスパンコール刺繍がびっしりと施されているようなドレスも。

喪服の展覧会というと、暗いイメージがつきまといますが、実際はそんな雰囲気はありませんでした。展覧会のタイトル「彼女は死がよく似合う」とはよくいったもので、女性とはどんな哀しみのときも、常に美しく、またファッショナブルでありたい、という心意気が感じられるような展覧会でした。

Death Becomes Her: A Century of Mourning Attire (2015年2月1日まで)
The Metropolitan Museum of Art
1000 Fifth Avenue at 82nd Street, New York, NY
T: 212-535-7710
http://www.metmuseum.org/exhibitions/listings/2014/death-becomes-her

Photos:
1, 2, 4, 5
Gallery View
Anna Wintour Costume Center, Lizzie and Jonathan Tisch Gallery
Image: © The Metropolitan Museum of Art

3.The “Black Ascot,” 1910
Courtesy of The Metropolitan Museum of Art, Getty Images

Navigator
市川 暁子

フリーランスのジャーナリストとしてNYのファッションやカルチャー、ライフスタイルに関する記事を雑誌や新聞に寄稿。NYコレクションの取材は10年以上続けており、CFDA(アメリカファッション協議会)ファッション大賞のデザイナーもノミネートしている。ほか、並行してブラジルのサンパウロおよびリオのファッションウィーク取材も継続中。2007年には『NYのおみやげ』(ギャップジャパン)を、2013年にはブラジル人イラストレーター、フィリペ・ジャルジンの作品集『スケッチ&スナップ』(六燿社)を編集、出版した。www.originalslope.com

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