ニューヨークのFIT(ファッション工科大)内にあるミュージアムで「イヴ・サンローラン+ホルストン:創造的な70年代」展がはじまりました。折しもこの春のファッショントレンドは70年代。まさにタイムリーな企画です。
1970年代といえば、それまでオートクチュール全盛の時代だったファッション業界が、プレタポルテ(既製服)へ大きく変換した時代です。いわば、モードが一般人の手にも届くようになり、人々はより自由にファッションを楽しむことができるようになりました。サンローランも、そしてホルストンもそんな時代の渦中でそれぞれのクリエーションをのびのびと発揮し、デザイナーとしても成長していったときです。
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本展覧会のキュレーターであるパトリシア・ミアースは「サンローランはフランス人、ホルストンはアメリカ人と国籍は違いながら、ふたりは驚くほどに共通点がある」と指摘します。ホルストンのほうが4歳ほど年上ですが、小さな街で生まれながら、デザイナーとしてパリとニューヨークという大都会で成功したこと。そしてウィメンズデザインにメンズの要素をとりいれたり、民族衣装からのインスピレーションを得たり、テーマ性も似通っている、ということなどです。
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同時代に同じ業界で活躍しながらほとんど面識のなかったふたりですが、「当時のセレブリティや社交界の人々は彼らの作品に夢中で、顧客はシェアしていた」とか。インターネットもなかった時代、お互いの作品を見る機会は今ほどにはなかったと思いますが、それぞれどこかでその存在を意識していたかもしれません。
展覧会は3つのカテゴリーに分けて展示されています。サンローランの有名なタキシードルックや、女優ローレン・バコールが実際着用したホルストンのシャツドレスなどが展示された「メンズウェア」のテーマ、ロシアや中国などの民族衣装から着想した「エキゾティック」のテーマ、そして最後は「ファッションヒストリー」にインスパイアされたテーマです。これは当時も彼らは昔のデザイン、1930年代とか40年代の“ヴィンテージ”からアイディアを得ていたということを示すものです。
70年代というと今からもう半世紀近く昔の服なのですが、時代の開放的でハッピーな雰囲気が色や柄、そしてシルエットのはしばしに感じられます。70年代のグラマラスなサンローラン、そして洗練されたシルエットがスタイリッシュなホルストン。今見ても充分に見応えのあるデザインだと思います。
Yves Saint Laurent + Halston: Fashioning the 70s (4/18まで)
Museum at the Fashion Institute of Tecnology
Seventh Avenue at 27th Street, New York, NY
http://www.fitnyc.edu/museum.asp
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(left) Saint Laurent Rive Gauche, pajama set, printed silk crepe, c. 1970, France, The Museum at FIT P89.55.4, Museum Purchase;
(right) Halston, pajama set, printed crepe de Chine, c.1976, USA, The Museum at FIT 91.41.12, Gift of Ms. Gayle Osman
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Halston, evening dress, sequined polyester, 1974, USA, The
Museum at FIT 80.128.12, Gift of Celanese
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Saint Laurent Rive Gauche, smoking evening suit, black wool, satin, and off-white silk crepe, c. 1982, France, The Museum at FIT
91.255.4, Gift from The Estate of Tina Chow.