HELLO! FROM NEW YORK

この春リバイバルの70’s。そのルーツに迫る展覧会。


Feb 18th, 2015

edit_akiko ichikawa

ニューヨークのFIT(ファッション工科大)内にあるミュージアムで「イヴ・サンローラン+ホルストン:創造的な70年代」展がはじまりました。折しもこの春のファッショントレンドは70年代。まさにタイムリーな企画です。

ニューヨークのFIT(ファッション工科大)内にあるミュージアムで「イヴ・サンローラン+ホルストン:創造的な70年代」展がはじまりました。折しもこの春のファッショントレンドは70年代。まさにタイムリーな企画です。

1970年代といえば、それまでオートクチュール全盛の時代だったファッション業界が、プレタポルテ(既製服)へ大きく変換した時代です。いわば、モードが一般人の手にも届くようになり、人々はより自由にファッションを楽しむことができるようになりました。サンローランも、そしてホルストンもそんな時代の渦中でそれぞれのクリエーションをのびのびと発揮し、デザイナーとしても成長していったときです。

※1

本展覧会のキュレーターであるパトリシア・ミアースは「サンローランはフランス人、ホルストンはアメリカ人と国籍は違いながら、ふたりは驚くほどに共通点がある」と指摘します。ホルストンのほうが4歳ほど年上ですが、小さな街で生まれながら、デザイナーとしてパリとニューヨークという大都会で成功したこと。そしてウィメンズデザインにメンズの要素をとりいれたり、民族衣装からのインスピレーションを得たり、テーマ性も似通っている、ということなどです。

※2
※3

同時代に同じ業界で活躍しながらほとんど面識のなかったふたりですが、「当時のセレブリティや社交界の人々は彼らの作品に夢中で、顧客はシェアしていた」とか。インターネットもなかった時代、お互いの作品を見る機会は今ほどにはなかったと思いますが、それぞれどこかでその存在を意識していたかもしれません。

展覧会は3つのカテゴリーに分けて展示されています。サンローランの有名なタキシードルックや、女優ローレン・バコールが実際着用したホルストンのシャツドレスなどが展示された「メンズウェア」のテーマ、ロシアや中国などの民族衣装から着想した「エキゾティック」のテーマ、そして最後は「ファッションヒストリー」にインスパイアされたテーマです。これは当時も彼らは昔のデザイン、1930年代とか40年代の“ヴィンテージ”からアイディアを得ていたということを示すものです。

70年代というと今からもう半世紀近く昔の服なのですが、時代の開放的でハッピーな雰囲気が色や柄、そしてシルエットのはしばしに感じられます。70年代のグラマラスなサンローラン、そして洗練されたシルエットがスタイリッシュなホルストン。今見ても充分に見応えのあるデザインだと思います。

Yves Saint Laurent + Halston: Fashioning the 70s (4/18まで)
Museum at the Fashion Institute of Tecnology
Seventh Avenue at 27th Street, New York, NY
http://www.fitnyc.edu/museum.asp

※1
(left) Saint Laurent Rive Gauche, pajama set, printed silk crepe, c. 1970, France, The Museum at FIT P89.55.4, Museum Purchase;
(right) Halston, pajama set, printed crepe de Chine, c.1976, USA, The Museum at FIT 91.41.12, Gift of Ms. Gayle Osman

※2
Halston, evening dress, sequined polyester, 1974, USA, The
Museum at FIT 80.128.12, Gift of Celanese

※3
Saint Laurent Rive Gauche, smoking evening suit, black wool, satin, and off-white silk crepe, c. 1982, France, The Museum at FIT
91.255.4, Gift from The Estate of Tina Chow.

Navigator
市川 暁子

フリーランスのジャーナリストとしてNYのファッションやカルチャー、ライフスタイルに関する記事を雑誌や新聞に寄稿。NYコレクションの取材は10年以上続けており、CFDA(アメリカファッション協議会)ファッション大賞のデザイナーもノミネートしている。ほか、並行してブラジルのサンパウロおよびリオのファッションウィーク取材も継続中。2007年には『NYのおみやげ』(ギャップジャパン)を、2013年にはブラジル人イラストレーター、フィリペ・ジャルジンの作品集『スケッチ&スナップ』(六燿社)を編集、出版した。www.originalslope.com

ラーメン界の風雲児が手がける「Ramen Lab」が遂にオープン!

MAST BROTHERSが提案する新感覚のチョコレートドリンク。


FEATURED ARTICLES

Mar 2nd, 2017

ICON OF TRAD

Vol.51 トラッドな春夏スーツ服地の知識を蓄えれば仕事も快適にこなせる。

サマースーツの定番服地となるウールトロについて、ニューヨーカーのチーフデザイナーの声と共にその特徴を予習。今シーズンのス...

Mar 9th, 2017

HOW TO

ジップアップ パーカ Vol.01

氷雪地帯で生活をしていたアラスカ先住民のイヌイット民族が、アザラシやトナカイなど、動物の皮革でフード付きの上着(アノラッ...

Oct 20th, 2016

HOW TO

ストライプ スーツ Vol.02

Vol.01のディテール解説に続き、Vol.02ではストライプスーツを着こなすスタイリングを提案。Vゾーンのアレンジで印象はぐっと変え...

Mar 2nd, 2016

ICON OF TRAD

Vol.39 女性がほんらい男物だったトレンチコートを着るとき

そもそも男性服であったトレンチコートは、どのようにして女性たちの間に浸透していったのだろうか?

Aug 25th, 2016

HOW TO

ネイビーブレザー Vol.01

アメリカントラディショナルファッションの代名詞ともいうべきネイビーブレザーは、日本では《紺ブレ》の愛称で親しまれている。...

Jan 12th, 2017

HOW TO

トレンチコート Vol.01

トレンチコートが生まれたのは第一次世界大戦下でのこと。イギリス軍が西部戦線での長い塹壕(=トレンチ)に耐えるために、悪天...


YOU MAY ALSO LIKE

Jun 29th, 2016

HELLO! FROM NEW YORK

ローワーイーストサイドの新しい映画館「メトログラフ」。

最近映画といえば、ネットの配信やレンタルが便利でなかなか映画館へ足を運ぶ機会が減ってきているかもしれません。東京でも80年...

Jun 15th, 2016

HELLO! FROM NEW YORK

地下鉄構内の新スポット「TURNSTYLE」。

最近、ニューヨークの地下鉄構内も続々と再開発が進んでいます。中でも話題となっているスポットは59St/Columbus Circle駅の地下...

May 25th, 2016

HELLO! FROM NEW YORK

テクノロジー時代におけるファッションの可能性。

メトロポリタン美術館の服飾部門であるコスチュームインスティテュートが企画する「Manus x Machina: Fashion in an Age of Techn...

May 11th, 2016

HELLO! FROM NEW YORK

ニューヨーカーのダイエット最新事情。

ニューヨークもこれから一気に夏に向かっていく季節です。だんだん薄着になっていくこの時期、ダイエットに関心が向く人も多いの...

Apr 27th, 2016

HELLO! FROM NEW YORK

グリーンポイントのカフェ「Bakeri」へ。

ブルックリンのウィリアムズバーグ地区を北上していくと「グリーンポイント」というエリアになります。今、この界隈もかなり開発...

Apr 13th, 2016

HELLO! FROM NEW YORK

メトロポリタン美術館の新館がオープン。

世界3大美術館のひとつに数えられるニューヨークのメトロポリタン美術館。その分館として近現代美術にフォーカスした「The Met B...