HELLO! FROM NEW YORK

ポジティビティに満ちたオノ・ヨーコ回顧展。


Jun 3rd, 2015

edit_akiko ichikawa

オノ・ヨーコ。たぶん世界で一番有名な日本人女性なのではないでしょうか? 故ジョン・レノンの妻として、そして現代美術家として。もしかしたら、彼女のアート作品にはあまり触れたことのない人も多いかもしれません。そんな方には特におすすめしたい、オノ・ヨーコの初期の作品を集めた回顧展「Yoko Ono: One Woman Show1960-1971」が今、ニューヨークのMoMAで開催されています。

オノ・ヨーコ。たぶん世界で一番有名な日本人女性なのではないでしょうか? 故ジョン・レノンの妻として、そして現代美術家として。もしかしたら、彼女のアート作品にはあまり触れたことのない人も多いかもしれません。そんな方には特におすすめしたい、オノ・ヨーコの初期の作品を集めた回顧展「Yoko Ono: One Woman Show, 1960-1971」が今、ニューヨークのMoMAで開催されています。

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実は1971年、彼女は架空の展覧会「One Woman Show 」をMoMAで開催するという告知を新聞に掲載したことがあります。それは「Museum of Modern (F)art」と題された“作品”で、人々がMoMAまで来てみるとそれは嘘だったと気付かされるというものでした。プレスプレビューで彼女は「あれから40年以上経って、当時は誰もかえりみなかった作品をMoMAで皆さんに観ていただけるのはとても嬉しいです」と語りました。

展覧会では125点の作品が時系列に展示されています。前衛的な作風で知られる彼女の作品ですが、その多くはとてもシンプルなコンセプトです。そして多くは観客が参加することで成立するというのが特徴となっています。例えば最も初期の作品のひとつ「Painting to Be Stepped On」(1960/1961)はさりげなく床に設置され、観覧する人が踏みつけることによって完成する作品です。

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そして1964年に発表された「Cut Piece」は、彼女が着用している衣服を観客が次々にハサミを使って切り取っていく、というセンセーショナルな作品です。最初は遠慮がちだった観客たちも、だんだん大胆になり、ある種の狂気を伴いながら彼女の衣服をバラバラにしていく様子は鬼気迫るものがあります。

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そしてロンドンのギャラリーで発表され、ジョン・レノンとの出逢いとなったことで有名な「Ceiling Painting」(1966)も見どころでしょう。脚立を上り、ぶらさがっている虫眼鏡を使って天井に書かれた文字を見ると小さく「yes」とある、というもの。残念ながらMoMAでは私たちは脚立に上ってレノンと同じ体験をすることはできませんが……。

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代わりにこの展覧会用に制作された「To See The Sky」(2015)の螺旋階段には上ることができます。天窓を通して空を見る、という作品。空はこれまでずっと彼女の作品の大きなテーマとなってきました。その原体験は第2時世界大戦で疎開していたころのこと。「自分の周りのものごとがどんなに滅茶苦茶だったとしても、いつも空だけはそこにあった。空がそこにある限り、自分は絶対にあきらめない、そう決意したときから空が大好きになった」というのです。

青空のもと彼女がつくったチェスでゲームを楽しめるという「Yoko Ono’s White Chess Set」(1966)も美術館の中庭に設置されています。展覧会を通じて感じたのは、彼女の作品がどれもとてもポジティブなこと。前衛アートというのは人に理解されにくいジャンルですが、プレビューで語った彼女のメッセージがとても力強かったので最後に紹介します。

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「誰に見てもらえなくても、誰に気付いてもらえなくても、アイディアがあったら何でもやってみましょうよ。全てのクリエイティビティはつまらないものなんてないのだから、偏見を持たず、リスペクトすべき。私たちは無意識の間では繋がっているもの。クリエイティブであることが、世界をよりいいものにしていくから」。

Yoko Ono: One Woman Show, 1960-1971(9月7日まで)
Museum of Modern Art
11 West 53rd St. New York
T: 212-708-9400
営:10:30~17:30 (Sun~Thu, Sat), 10:30~20:00 (Fri)
http://www.moma.org/visit/calendar/exhibitions/1544

Photos:
Cover,
Yoko Ono with Apple (1966), at press preview for Yoko Ono: One Woman Show, 1960-1971, on view at MoMA, May 17 – September 7, 2015.
Photo: Ryan Muir © Yoko Ono

1, 4, 5
Installation view of Yoko Ono: One Woman Show, 1960-1971, The Museum of Modern Art, New York, May 17–September 7, 2015. © 2015 The Museum of Modern Art. Photo: Thomas Griesel.

2,
Painting to Be Stepped On. 1960/1961.
Installation view, Paintings & Drawings by Yoko Ono, AG Gallery, New York, July 17–30, 1961.
Photograph by George Maciunas.
The Museum of Modern Art, New York. The Gilbert and Lila Silverman Fluxus Collection Gift, 2008.
© 2014 George Maciunas

3,
Cut Piece (1964) performed by Yoko Ono in New Works of Yoko Ono, Carnegie Recital Hall, New York, March 21, 1965.
Photograph by Minoru Niizuma.
© Minoru Niizuma. Courtesy Lenono Photo Archive, New York

6,
Yoko Ono’s White Chess Set (1966) in the Abby Aldrich Rockefeller Sculpture Garden, presented in conjunction with Yoko Ono: One Woman Show, 1960-1971, The Museum of Modern Art, New York, May 17–September 7, 2015. © 2015 The Museum of Modern Art. Photo: Thomas Griesel.

7,
Yoko Ono interacting with people activating Bag Piece (1964), a participatory work in Yoko Ono: One Woman Show, 1960-1971, on view at MoMA, May 17 -September 7, 2015.
Photo by Ryan Muir © Yoko Ono

Navigator
市川 暁子

フリーランスのジャーナリストとしてNYのファッションやカルチャー、ライフスタイルに関する記事を雑誌や新聞に寄稿。NYコレクションの取材は10年以上続けており、CFDA(アメリカファッション協議会)ファッション大賞のデザイナーもノミネートしている。ほか、並行してブラジルのサンパウロおよびリオのファッションウィーク取材も継続中。2007年には『NYのおみやげ』(ギャップジャパン)を、2013年にはブラジル人イラストレーター、フィリペ・ジャルジンの作品集『スケッチ&スナップ』(六燿社)を編集、出版した。
www.originalslope.com

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