メトロポリタン美術館のコスチュームインスティチュートで中国をテーマとした服飾展「China: Through the Looking Glass」が開催中です。これは1700年代からの中国の民族衣装と、中国の美意識やアートからインスパイアされた現代のデザイナーたちの作品、約140着を展示するものです。
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今回は美術館内の中国美術部門とも提携した、かなり大掛かりな展示になっており、展示会場も服飾部門にとどまらずかなり広大なスペースをとっているのが特徴といえます。
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展覧会全体のアートディレクションは映画「花様年華」などで知られるウォン・カーウァイ監督が手がけました。会場のあちらこちらで近現代の中国映画の印象的なシーンがオムニバスで投影され、展示をより臨場感のあるものにしています。中には 最後の皇帝として知られる愛新覚羅溥儀が幼少のころ着用したローブもあり、そのコーナーでは映画「ラストエンペラー」の一幕が大画面で映し出されています。
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キュレーターのアンドリュー・ボルトンによれば「西欧人が中国にコンタクトを持ったのは16世紀に遡る。以来、中国の東洋的なイメージやオブジェは、ファッションデザイナーたちにとって魅力的なリソースとなってきた」ということです。
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染め付けの陶器を連想させる青と白のドレスや、チャイナドレスのようにセクシーなライン、そして中国が誇る繊細な刺繍ワークなど、現代のデザイナーたちを魅了する中国的なディティールの数々。古くはポール・ポワレ、そしてイヴ・サンローランやアレキサンダー・マックイーン、最近ではトム・フォードやジョン・ガリアーノのディオール、カール・ラガーフェルドのシャネルなど。中国的な意匠に魅了され、インスピレーションを得たデザイナーを挙げればきりがないでしょう。
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展示は中国の伝統的な漆や螺鈿の家具や陶器など、美術作品も上手く組み合わされ、ファッションと美術の関係も見て取れる内容になっています。ファッションを軸にしながら、中国カルチャー全体の奥深さを感じ取れる、とても内容の濃い、そしてエンターテイメント性も高い展覧会でした。
China: Through the Looking Glass (8/16まで)
The Metropolitan Museum of Art
1000 Fifth Avenue at 82nd St. , New York
T: 212-650-7710
http://www.metmuseum.org/
Photos:
Cover & ※3,
Anna Wintour Costume Center, Imperial China
Photo: © The Metropolitan Museum of Art
※1,
Chinese Galleries, Astor Court, Moon in the Water
Photo: © The Metropolitan Museum of Art
※2,
Film still from The Last Emperor, 1987
Photo: Courtesy of The Metropolitan Museum of Art, HELMSDALE FILM
CORP. / THE KOBAL COLLECTION
※4,
Chinese Galleries, Frances Young Tang Gallery, Blue and White Porcelain
Photo: © The Metropolitan Museum of Art
※5,
Chinese Galleries, Douglas Dillon Galleries, Chinoiserie
Photo: © The Metropolitan Museum of Art