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HELLO! FROM NEW YORK
レンガ造りの古いビルに挟まれたトライベッカにある小径、その名も「Cortlandt Alley」に”ニューヨークで一番小さい”というふれこみのミュージアム「Mmuseumm」があります。10年以上ニューヨークに住んでいる私も、全くその存在を知らなかったくらい、ひっそりとしたストリートなのですが、実は多くの映画で警察と泥棒が追いかけっこをするというシーンが撮影されている、という場所なのだそうです。
美術館のスペースは3人も入れば満杯、といった感じの広さ。もともとは縫製工場だったビルの業務用エレベーターだったそうです。キュレーターのひとりアレックス・カルマンさんによれば「僕らがこのミュージアムを開館するまではもう何年も放置されていた」という”物件”。
このミュージアムのコンセプトについては「ニューヨークシティは全ての人々、そして全てのモノたちにとってのホーム。 社会からは見捨てられがちな、とるに足らない小さなモノたちこそモダンカルチャーを模索するには大切なことだと僕らは考えた。でもそんなモノたちを収蔵し公開するミュージアムがこれまでニューヨークにはなかった、だから僕らがつくったんだ」だそうです。
今回3シーズン目となる展覧会には、実は私の友人も出品しています。作品名は「Chirimen Monsters」。ちりめんじゃこのパックにときどき混じっている小さな海の生物たち―タツノオトシゴや魚、イカなどをホルマリン漬けにしたというもの。ほか、偽物のIDコレクションや北朝鮮のお土産、といった作品も陳列されています。中には”パーマネントコレクション”もあり、 2008年の記者会見で当時のブッシュ大統領に投げつけられた、というので話題になった靴があったのは笑えました(真偽のほどは定かでないようです)。
ミュージアム的な機能もなかなか充実していて、トールフリーナンバーに電話をかけ、作品のリファレンス番号を入力すると、それぞれの作品についての説明が聴ける、というサービスも。美術館の片隅に”ミュージアムショップ”と命名された棚があって、カタログを売っていたりするのも、洒落がきいています。
このミュージアムの企画をしたアレックス・カルマンさん、そしてジョッシュ&ベニー・サフディ兄弟は大学時代の友達同士。「映画製作を中心に、アートやジャーナリズムなどさまざまなメディアミックスを試みながら人間のハートに迫る作品を作っていきたい」そう。大都会ニューヨークで、日々忙しいニューヨーカーたちには忘れ去られていたような小さなジャンクたち。でも改めてスポットを当て、コレクションとして見せるというコンセプト自体がアート的、ともいえる 楽しいプロジェクトです。
Mmuseumm
Cortlandt Alley between Franklin St & White St, New York City, NY 10013
Tel 1-888-763-8839
http://mmuseumm.com
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市川暁子
フリーランスのジャーナリストとしてNYのファッションやカルチャー、ライフスタイルに関する記事を雑誌や新聞に寄稿。NYコレクションの取材は10年以上続けており、CFDA(アメリカファッション協議会)ファッション大賞のデザイナーもノミネートしている。ほか、並行してブラジルのサンパウロおよびリオのファッションウィーク取材も継続中。2007年には『NYのおみやげ』(ギャップジャパン)を、2013年にはブラジル人イラストレーター、フィリペ・ジャルジンの作品集『スケッチ&スナップ』(六燿社)を編集、出版した。www.originalslope.com
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