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HELLO! FROM NEW YORK
風船で作った犬のおもちゃにホイップクリームたっぷりのケーキ 、靴下にすっぽり収まった子猫、そしてつぶらな瞳のロブスター……どれもキュートでポップ、そして幸福感あふれるそんなモチーフばかり。でも、そのサイズを巨大にしたり、または素材を変えてみたりしたらどうなる?
さて、いよいよ夏休みも本番に。ホイットニー美術館で現代美術家ジェフ・クーンズの大回顧展「A RETROSPECTIVE」が始まりました。今回は時系列に作品を並べ、美術館のほとんどのフロアを使った大々的な企画となっています。
私はたまたま一番上の階(新しい作品がある部屋)に初めに到着してしまったのですが、観る順番はもしかしたらどちらでもよいかもしれません。比較的よく知られている商業的モチーフの巨大彫刻作品から、初期のビニール製のウサギやフラワーなどオモチャそのものを使った作品へ、そのルーツを辿っていく、という感じでした。
今更ながらのコメントですが、感動したのはやはり彫刻作品の完成度。あの風船犬の結び目のひだのリアルさや、ファンシーなスーベニアショップに売っているようなテディベアや猫の置物を超拡大し、そして隅々まで”本気”で再現しているディティールです。世界最大の陶器、と話題になったあのマイケル・ジャクソンを象った作品もあります。
クーンズは100名以上のまるで”社員”のようなスタッフを抱えながら、1つの作品を何年もかけて制作することで知られていますが、これだけの作品をつくるにはそれぐらいの手間ひまがかかるのは納得できます。
そして一方で、これはアートなのか? という疑問も湧いてきます。誰もが見慣れた商業モチーフが改めてピックアップされ、拡大されることよって、それがリアルにも、そして逆にフェイクにも見えて来る……。でもクーンズにしてみればきっとそれは承知済で、コンセプトから制作過程、そして最終の作品と美術館(やギャラリーなど)に設置されるまでのトータルなプロセス自体が”アート”ということなのではないか、とも思います。
プレビューにはクーンズ氏本人も会場に来て、取材陣に囲まれながら満面の笑みでフラッシュを浴びていました。その表情や様子はとっても”アメリカ人”ぽいなあと感じました。なんだか彼自身が「アメリカ人」か「スマイル」というタイトルの”作品”のような気も。実際、本人がモチーフとなった90年代の(驚愕の)作品も展覧会にはあります。彼が元ポルノスター議員”チッチョリーナ”と結婚していた時代の……。
展覧会と併催して、ロックフェラーセンター前では11mもの巨大屋外彫刻「Split-Rocker 」も設置されています。同時にファストファッションのH&Mでは、かの風船犬をプリントしたショルダーバッグも発売。この夏、ニューヨークではクーンズ旋風が巻き起こっているようです。
JEFF KOONS: A RETROSPECTIVE (10/29まで)
Whitney Museum of American Art
945 Madison Avenue, New York
Tel 212-570-3600
http://whitney.org/Exhibitions/JeffKoons
JEFF KOONS: SPLIT-ROCKER AT ROCKEFELLER CENTER
30 Rockefeller Plaza
http://www.rockefellercenter.com/events/2014/06/25/jeff-koons-split-rocker/
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市川暁子
フリーランスのジャーナリストとしてNYのファッションやカルチャー、ライフスタイルに関する記事を雑誌や新聞に寄稿。NYコレクションの取材は10年以上続けており、CFDA(アメリカファッション協議会)ファッション大賞のデザイナーもノミネートしている。ほか、並行してブラジルのサンパウロおよびリオのファッションウィーク取材も継続中。2007年には『NYのおみやげ』(ギャップジャパン)を、2013年にはブラジル人イラストレーター、フィリペ・ジャルジンの作品集『スケッチ&スナップ』(六燿社)を編集、出版した。www.originalslope.com
地下鉄で行ける「ブライトンビーチ」へ。
サウス・ストリート・シーポートで楽しむサマーイベント。