旅先で「ご当地グルメやローカルフードを食べたい！」と思い、探してみてもなかなか簡単に見つからなかった経験ありませんか？ もちろんガイドブックやニューヨーク特集の雑誌はたくさんあるけれど、実用的かと問われれば難しいところ。今回ご紹介するのはお店の場所と情報がコンパクトにまとまって、分かりやすく持ち歩きやすい「地図」というフォーマットにしたフードマップなんです。

つくっているのはALL YOU CAN EAT PRESSを主宰する松尾由貴さん。これまでニューヨークの『DONUTS MAP』、『BURGER MAP』そして最近は『RAMEN MAP』を編集、発行しました。そのいきさつについて聞くと「ニューヨークに来て間もない頃からローカルフードに興味を持ち、食べ物日記のようなものをつけていたのです。中でも大好物でもある”ドーナッツ”のネタはたくさんあったので本にしたいと思い、出版社に持ち込んだのですが、『ドーナッツだけでは本にならない』と言われてしまって。それである日、本じゃなくて地図にしたらいいんじゃないか？　と思いついて、自費出版することにしたんです」とのこと。

そのアイディアを思いついた同じ日に、グラフィックデザインをしてくれる友人ともばったり遭遇したそうです。「これはもうやるしかない！ と感じましたね。彼はJ. CREWなどでもアートディレクションしている腕利きのデザイナーなのですが、私のプランを気に入ってくれて、二つ返事で引き受けてくれました」とその時のことを松尾さんは語ります。

半透明の紙袋に入った地図は、プロダクトとしても可愛らしく、シールを破って地図を取り出すワクワク感は、まるで出来たてほやほやのドーナッツやハンバーガーを食べるときに似ているような気がします。

地図にはマンハッタンだけでなくブルックリンやクイーンズも含め、それぞれ30〜40軒ほどのお店が紹介されています。全て松尾さんご自身が試食され、厳選したラインナップというから驚き。「ハンバーガーのときは3か月で70個、ラーメンは50軒は行きましたね。さすがに取材中は肌荒れや体重のことなど、体調管理が大変でした（笑）。でも食べることが好きで苦にはならないんです」。実際お会いしてみると小柄で（ほんとうにマップのように）可愛らしい松尾さんが週に5日もハンバーガーを食べていた、というのはちょっと信じられないエピソードです。

このマップシリーズは今後も続いていくとか。ドーナッツ柄のハンカチやラーメンの試食券がついた”コンボ”シリーズもあるので、ニューヨークのおみやげにしても喜ばれそうですね。

今回は特別にNEWYORKER MAGAZINE読者の方に是非行っていただきたいお店を3軒、松尾さんに推薦していただきました。

Peter Pan Donuts & Pastry Shop
727 Manhattan Avenue, Brooklyn / T: 718-389-3676

「ニューヨークドーナッツLOVERのメッカ。ポーランド移民が多く住む グリーンポイント地区にあり、朝からおじいさんがコーヒーをゆっくり飲んでいたりする、そんな古き良きアメリカらしい光景。そんな雰囲気の中で昔ながらのドーナッツを是非味わって欲しいです」

Burger Joint at Le Parker Meridian
119 West 46th Street, New York / T: 212-708-7414

「ミッドタウンにあるシティホテル、ル・パーカーメリディアンのロビーの通路の奥に突如現れるバーガースタンド。こんな意外性のある隠れ家的なロケーションが面白い。私はハンバーガー用のパンは素朴で主張のないポテトロールでいいと思っているのですが、ここのバーガーもそんなパンを使ったオーセンティックな味わいが好みです」

Bassanova Ramen
76 Mott Street, New York / T: 212-334-2100

「ラーメンファンなら誰もが知っている”環七”沿いに本店がある本格派。豚濁スープがシグニチャーです。実はここには私が”すだちそば”をヒントに考案した『レモンペッパーラーメン』というメニューがあるんです。スライスしたレモンがラーメンの上にのっているのですが、その酸味によるすっきりとした後味が特長なんです」（写真は 豚濁グリーンカレーラーメン）