HELLO! FROM NEW YORK

Vol.36 2014年秋冬NYコレクション、オフランウェイ顛末記。


Feb 26th, 2014

Edit_Akiko Ichikawa

大雪と寒波に見舞われた2014年秋冬NYファッションウィーク。私も10年以上NYコレクションの取材をしていますが、こんなに過酷だったシーズンは初めて、と言っていいかもしれません。

メイン会場は今回もアッパーウェストサイドのリンカーンセンターに特設テントが設置されました。しかし、ショーはこの会場のみで開催されるのではなく、チェルシーやソーホーなどダウンタウンでも多く開催されます。

シーズンによって会場選択のトレンドもあるのですが、今回多くのデザイナーが会場に選んだのはSPRING STUDIOSというトライベッカにあるフォトスタジオ。前シーズンに「カルバンクライン」がこの会場を発掘し、今回は「マイケルコース」や「セオリー」「オープニングセレモニー」「アルチュザラ」などがここで新作を発表しました。

またNY コレクション史上初、ブルックリンでショーを開催したのは「アレキサンダー ワン」。ネイビーヤードというブルックリンの倉庫街にあるフォトスタジオが会場で、地下鉄の最寄り駅はありません。車でいくか、またはイーストリバー沿いのフェリー(!)で行くしかない、という地の利なのです。

ほか、「ダナキャラン」はウォールストリートで、「マーク バイ マーク ジェイコブス」はマンハッタンの南端にあるピアで、といったように今シーズンはショー会場が散らばっていて、本当に移動が大変だったシーズンです。

しかしファッショニスタたちはそんな状況にも負けず、連日着飾ってショー会場に足を運んでいました。気温が−10℃であっても、そしてストリートは溶けかかった雪の泥道だったとしても、素足にハイヒール、キラキラのスパンコールがついたマキシ丈のスカートをはいて、ショーの会場前でニッコリとスナップに収まるのです。

エディターやスタイリスト、バイヤーたちの私服をスナップにおさめる「ストリートスタイル」のフォトグラファーたちは、今シーズンも各会場の前に”もうひとつのキャットウォーク”を作っていました。そして、今シーズンはなんと、カメラでなく画用紙と絵の具を持って、ストリートでスケッチをする人まで出現していたのです。カラフルに着飾ってショーに到着する人々を描いたスケッチはまるで真冬のトロピカルバードのような絵でした。

ショー会場の中と外の”ファッションショー”は今や、どちらも同じくらい盛り上がっている、といってもいいかもしれません。最終日には再びスノーストームが再来し、特に「ラルフローレン」のショーが始まるころには吹雪になっていました。車もつかまらず、私も行けないかも? と思ったくらいですが、幸いタクシーがつかまり会場に到着してみると、招待客の多くは長靴やダウンといった恰好でした。今シーズンのNYコレクションはお洒落な長靴やスノーブーツがオフランウェイでは”マストアイテム”だったのは間違いないでしょう。


NAVIGATOR
市川暁子

フリーランスのジャーナリストとしてNYのファッションやカルチャー、ライフスタイルに関する記事を雑誌や新聞に寄稿。NYコレクションの取材は10年以上続けており、CFDA(アメリカファッション協議会)ファッション大賞のデザイナーもノミネートしている。ほか、並行してブラジルのサンパウロおよびリオのファッションウィーク取材も継続中。2007年には『NYのおみやげ』(ギャップジャパン)を、2013年にはブラジル人イラストレーター、フィリペ・ジャルジンの作品集『スケッチ&スナップ』(六燿社)を編集、出版した。www.originalslope.com

NYのミニシアターで映画鑑賞!

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